2002 Fiscal Year Annual Research Report
常温溶融塩溶媒システムと電子移動触媒を用いる環状化合物合成法の開発
Project/Area Number |
14044065
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Research Institution | Tottori University |
Principal Investigator |
伊藤 敏幸 鳥取大学, 工学部, 助教授 (50193503)
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Keywords | 常温溶融塩 / 環状化合物合成法 / 電子移動触媒反応 / 鉄塩触媒 / 環境調和型有機合成 |
Research Abstract |
鉄は地球上で4番目に存在度の多い元素であり,低毒性で環境に対する負荷が小さく,環境に優しい「グリーンケミストリー」の実現のために好ましい元素と考えられるが,触媒反応への応用例はさほど多くない。我々は,鉄イオンの性質に注目した触媒反応を開発したいと考え,3価鉄塩触媒により,スチレン誘導体の[2+2]環化付加,およびスチレン誘導体とキノンの[3+2]型環化付加反応が進行することを見いだした。この反応は1電子移動から始まると考えられ,極性の高いイオン液体(常温溶融塩)を反応媒体として利用できれば,さらに反応効率を向上できるものと期待し,スチレン誘導体とキノンとの反応について検討を行った。イオン液体(常温溶融塩)は室温で液体状態をとり,非プロトン性極性溶媒として比類のない高い極性を有し,難燃性で低毒性というユニークで優れた特性を持つ反応媒体である。その結果,アセトニトリル中では反応完結に数時間要する反応が,イオン液体[bmim[PF_6を反応媒体に用いるとわずか数分で完結し,劇的な反応加速が実現し,この反応媒体中ではFe(BF_4)_2が最も優れた触媒になることがわかった。 こうして合成できた2,3-ジヒドロベンゾフラン骨格は多くの植物由来天然物に共通に含まれ,不斉合成法の開発が望まれる。本反応は1電子移動を契機として開始すると考えられ,直接的な不斉触媒反応化は困難と考えられた。そこで,次に,鉄塩触媒反応に酵素反応を組み合わせたハイブリッドプロセスによる2,3-ジヒドロベンゾフランの不斉合成を検討した。3位にヒドロキシメチル基を有するベンゾフラン誘導体を合成し,リパーゼ不斉アシル化反応により光学分割を検討したところ,5位のフェノール性水酸基がフリーではエナンチオ選択性が低く,Novozym435でE値10が最高であった。一方,メトキシ体とすると飛躍的に選択性が向上し,さらにMOM基,ベンジル基では同じ酵素でE値100以上まで向上し,完璧に光学分割することに成功した。アシル化を受ける水酸基と遠く離れた位置の官能基でエナンチオ選択性が大きく影響を受けることは非常に興味深い結果であり,金属触媒反応と生体触媒反応を組み合わせる方法論の有用性を示すことができた。
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Research Products
(2 results)
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[Publications] Ohara, H., Kiyokane, H., Itoh, T.: "Cycloaddition of Styrene Delivatives with Quinone Catalyzed by Feriic Ion; Remarkable Acceleration in an Ionic Liquid Solvent System"Tetrahedron Letters. 43. 3041-3044 (2002)
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[Publications] Itoh, T., Kawai, K., Hayase, S., Ohara, H.: "Synthesis of Optically Active 2,3-Dihydrobenzofuran Derivatives through a Combination Strategy of Iron(III)-Catalyzed Reaction and Enzymatic Reaction"Tetrahedron Letters. 44(in press). (2003)