2002 Fiscal Year Annual Research Report
自在不斉誘導・不斉記憶に基づくポルフィリン反応場の構築
Project/Area Number |
14045206
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Research Institution | Saitama University |
Principal Investigator |
久保 由治 埼玉大学, 工学部, 助教授 (80186444)
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Keywords | 不斉 / 不斉誘導 / 不斉記憶 / ポルフィリン / 反応場 / クラウンエーテル |
Research Abstract |
近年のホスト・ゲスト化学において、静的分子認識から動的分子認識へのパラダイムシフトを担う方法論の開拓が注目されている。特に、生体システムの機能素子であるタンパク質は、刺激や情報に対して動的に応答できる柔軟な構造を持ち巧みな機能制御を発現している。このような作用機序をヒントに新しい動作概念をもつ分子システムの合成開発は、自律機能を有するソフトマテリアルの創製に大いに寄与する。当該研究課題では、情報因子として「不斉」を分子レベルで操作できる手法の開発を目指し、自在不斉誘導や不斉記憶ができる分子システムの合成と機能評価をおこなっている。本年度の実績を以下に記す。 1)クラウンストラップトビフェニルスペーサーを有する亜鉛(II)ポルフィリンダイマー:当該分子システムは、ある不斉ジアミンとのホスト・ゲスト相互作用を通じて、不斉誘起を発現する。そしてクラウンストラップト部位に配位可能なアロステリックエフェクター(金属イオン)を用いることによって効果的に不斉記憶できる(J. Am. Chem. Soc.,123,12700(2001))。この現象の一般性を検証するため金属イオンエフェクターにCa^<2+>を適用して評価した。その結果、同様な不斉記憶現象を観測できることがわかり再現性のある現象といえる。この成果は、第17回生体機能関連化学シンポジウム(2002年9月開催)で発表された。目下、その動的不斉場における不斉認識を検討している。 2)大環状クラウンエーテル誘導型亜鉛(II)ポルフィリンダイマー:上記1)の物性評価と平行して関連する新規化合物を創製することは、当該研究課題の遂行に必要な取り組みである。おりしも、高い配座柔軟性をもつジベンゾ-ジアザ-30-クラウン-10の両末端にアニオン結合部位を導入して、イオンペアー配位に伴う錯体形成をさせたところ、自己組織化してそのクラウンエーテル部位に不斉が誘起される現象を見いだした(New J. Chem.,27,221(2003))。そこで、この大環状クラウンエーテルの両末端に亜鉛(II)ポルフィリンを接続した化合物の合成をおこなった。尚、当該結果は日本化学会第83春季年会(2003年3月)にて報告される。
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[Publications] T.Tozawa, T.Tachikawa, S.Tokita, Y.Kubo: "Chirality induction in a dibenzo-30-crown-10 congener promoted by an ion-pair coordinated self-assembly"New Journal of Chemistry. 27. 221-223 (2003)