2003 Fiscal Year Annual Research Report
自在不斉誘導・不斉記憶に基づくポルフィリン反応場の構築
Project/Area Number |
14045206
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Research Institution | Saitama University |
Principal Investigator |
久保 由治 埼玉大学, 工学部, 助教授 (80186444)
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Keywords | 不斉誘起 / 不斉記憶 / ポルフィリン / クラウンエーテル / 円二色性スペクトル / キラルセンサー / アロステリー / キラル識別 |
Research Abstract |
当該研究課題の成果として、「自在不斉誘起」』および「不斉記憶反応場」というふたつの切り口から検討されたポルフィリン分子の機能開拓を報告する。 1.「自在不斉誘起」:ジベンゾ-ジアザ-30-クラウン-10誘導型亜鉛(II)ポルフィリンダイマー(1) 分子レベルで不斉情報を操作する方法論の開拓はキラルセンサーや不斉触媒の設計に対して有益な指針を提供する。われわれは、アキラルな柔構造である大環状クラウンエーテルに対してレジオ選択的に二つの亜鉛(II)ポルフィリン部位を導入した1を合成した。そのポルフィリン部位とダイトピックな相互作用を発現する不斉化学種を作用させて、1に不斉を誘起させることは十分可能である。事実、25℃、CH_2Cl_2-MeCN(8:2v/v)中、(1R,2R)-N,N'-ジメチルシクロヘキサンジアミン(2)を添加したところ、ポルフィリンSoret帯・Q帯のそれぞれに帰属する吸収バンドが長波長シフトし、Job plotの解析の結果、1:1錯体形成が示唆されその結合定数(log K_a)は6.04±2%と算出された。この錯体形成に伴う不斉誘起の様子を円二色性(CD)スペクトルでモニターしたところ、正の第一、負の第二Cotton効果が観測され、ポルフィリン部位間で2の不斉に相関したキラルなねじれが生じた。一方、1のクラウンエーテル部位も「形の制御」に対して有効に機能する。すなわち、CH_2Cl_2-MeCN(8:2v/v)中、1にK^+を添加したところ、吸収強度の減少とともにSoret帯の短波長シフト(2nm)を観測した。これはポルフィリン間での分子内励起子相互作用に帰属され、溶液中でポルフィリン環どうしがcofacialな配座をとっているものと思われる。以上、1は動的な配座変換を誘起する複数の機能部位をもつので、K^+のOff-Onに伴う不斉誘起現象を調査したところ、K^+にアシストされCD強度の増加を観測した。1の配座をtweezer型に事前構成化したことに伴う協同的不斉誘起現象は、キラルプローブを設計するうえで有効な方法論となろう。この成果は論文にまとめ現在投稿中であり、2004年3月下旬に開催される日本化学会第84春季年会で口頭発表される。 2.アロステリック亜鉛(II)ポルフィリンダイマー(3)を用いた「不斉記憶反応場」の発現と機能評価 クラウンストラップトビフェニルスペーサーをもつ亜鉛(II)ポルフィリンダイマー(3)は光学不活性であるが、その分子に結合できる適当なキラルジアミン類と金属イオンとをうまく組み合わせることにより、3に不斉情報を記憶させることができる(Y.Kubo, et al., J. Am. Chem. Soc., 2001, 123, 12700)。この不斉記憶反応場の機能開拓の一環として、ゲスト種にL-ホモシスチンを用いてキラル識別機能の評価したところ、"右"に記憶させた場と"左"に記憶させた場とにおいて、CDスペクトル挙動に差異を観測した。これは不斉記憶反応場がキラル識別機能を有することを示唆するものであり、その成果は同じく日本化学会第84春季年会で口頭発表される。
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