2003 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
14045212
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
小川 桂一郎 東京大学, 大学院・総合文化研究科, 助教授 (50114426)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
原田 潤 東京大学, 大学院・総合文化研究科, 助手 (00313172)
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Keywords | サーモクロミズム / プロトン移動 / プロトン互変異性 / 会合 / サリチリデンアニリン / ヒドロキシフェナジン / ヒドロキシキノリン |
Research Abstract |
温度変化にともなって物質の色が可逆的に変化する現象はサーモクロミズムとよばれ,古くから化学者の関心を集めてきた.サーモクロミズムの原因はさまざまであるが,そのなかでプロトン互変異性は主要な原因の一つとして知られる.たとえば,サリチリデンアニリン(1)とその誘導体では,OH形とNH形の間の平衡が温度によって移動することがサーモクロミズムの原因とされている.私たちは,サリチリデンアニリン類の飽和炭化水素溶媒溶液を冷却すると,NH形の存在率が著しく増加することを見出し,これが分子の集合化に支配されていることを明らかにした.すなわち,1およびその誘導体のイソペンタン溶液の紫外可視吸収スペクトルは,297KではOH形に帰属される吸収帯だけを紫外部に示すが,140Kから120K[イソペンタンの融点(113.3K)より上の温度]では,NH形に帰属される新たな吸収帯を可視部に示した.これは,温度の低下によって互変異性平衡がNH形に著しく移動したことを示している.つまり,NH形は室温ではOH形よりもはるかに不安定であるが,低温では逆にOH形よりもはるかに安定になっている.この結果は,SA類がイソペンタン溶液中低温で会合し,それによってNH形が安定化されているとして説明される.また,2-ヒドロキシフェナジン(2)とその誘導体の飽和炭化水素溶媒溶液がサーモクロミズムを示すことを見出し,これも分子の集合化に支配されていることが分かった.さらに,7-ヒドロキシキノリン誘導体の飽和炭化水素溶媒溶液も,同様のサーモクロミズムを示すことを見出した.
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Research Products
(1 results)
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[Publications] K.Ogawa, M.Miura, T.Nakayama, J.Harada: "Photochromism of Aza-aromatics with Hydroxy Group. Intermolecular Proton Transfer in Glassy Solution"Chem.Lett.. 32. 840-841 (2003)