2003 Fiscal Year Annual Research Report
疎水性物質との相互作用に関わる環境汚染物質分解菌表層分子機構の解明とその応用
Project/Area Number |
14045222
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Research Institution | Tokyo Institute of Technology |
Principal Investigator |
堀 克敏 東京工業大学, 大学院・生命理工学研究科, 助手 (50302956)
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Keywords | アンカー / ピリ / ネガティブ染色 / VP-FESEM / Acinetobacter / DLVO理論 |
Research Abstract |
昨年度までの成果で、トルエン分解細菌Acinetobacter sp.Tol 5株は、アンカーというこれまでに報告例のない細胞外付属器によって、固体表面につながっていることが明らかになった。本年度は、Tol 5株の固体付着メカニズムをさらに詳細に検討した。燐タングステン酸によりネガティブ染色した細胞をTEMで観察したところ、Tol 5株はアンカー以外にも無数の付属器を周毛状に有していることが明らかと成った。TEM像の統計処理の結果、アンカーとピリの長さはそれぞれ378nm、286nm、太さはそれぞれ37nm、10nmであり、両者の形態上の相違は統計的に有意なものであった。一方、表面に付着している細胞の立体像を観察するために、我々はこれまでFE-SEMを用い、その結果アンカーの発見に至ったわけであるが、前処理、特に脱水の段階で生じ得るアーキファクトの可能性を排除することは困難であった。そこで今回は、前処理操作が無用の環境型-FESEMによる観察を行った。低真空下で含水の生体試料を観察するE-SEMはこれまでも報告があったが、解像度が低く、細菌細胞について満足のいく観察像を示したものは存在しなかった。我々は、E-SEMとFE-SEMの技術を融合し、また二次電子像の検出システムも刷新された新型のVP-FESEMを、初めて細菌細胞の表層観察に適用し、生のままの立体像を得ることに成功した。その結果、ピリは前処理の過程で形態が変化しているが、アンカーの長い直線構造と先端で表面に付着している様子は、本来の形態であることを立証することができた。さらに、Tol 5の野生株と付着性低下変異株T1について付着性のイオン強度依存を調べた結果、T1は、細菌細胞の付着について従来より提唱されているDLVO理論に従うが、野生株は従わず、新たなメカニズムで表面付着を達成することが明らかとなった。
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[Publications] S.Ishii, J.Koki, H.Unno, K.Hori: "Two morphological types of Acinetobacter sp.Tol 5 cell appendages"Applied and Environmental Microbiology. (発売予定)(受理済). (2004)