Research Abstract |
湿性沈着は最も重要な大気の浄化過程である。化石燃料の燃焼等により大気中に排出されたSO_2やNOxなどの酸性物質により,霧や雨は酸性化する。本研究では,霧の生成時や降雨時にエアロゾルやガスを取り込む湿性沈着機構の解明、及び観測データに基づくアジア地域における酸性物質の湿性沈着量を推定することを目的とし、以下のような課題について研究を行った。 1.分析にMicro-PIXE,大型放射光SPring-8を応用し,固形化液滴粒子一粒一粒の化学成分分析を可能とし,霧,雨,雪等の個別性状特性や変質を調べた。さらにエアロゾルの変質にも応用した。 2.六甲山にて,霧粒やエアロゾルの粒径別化学成分濃度,大気中ガス成分濃度等を同時に測定し,硫酸塩や硝酸塩等の化学物質収支から汚染物質のレインアウト機構を調べた。汚染物質の霧水への吸収量はHNO_3+NO_3^-が30%,SO_2+SO_4^<2->が4%程度で,エアロゾルの除去係数は化学種により異なり,0.1〜O.34の範囲でCa^<2+>,SO_4^<2->,Na+が大きかった。 3.日本及び東アジア酸性雨モニタリング・ネットワークデータを用い,酸性雨・酸性沈着特性を調べた。東アジア地域ではnss-SO_4^<2->沈着量が欧米に比べて大きいが,これは濃度が高いことに加え降水量が多いことによる.中国ではnss-SO_4^<2->濃度が他地域より桁違いに高く,またNO_3^-濃度より高く,H_2SO_4の酸性沈着への寄与はきわめて大きい。日本では夏に太平洋岸,冬に日本海側で酸性沈着が増大する。nss-SO_4^<2->は全国規模で平均3.5%/y減少したが,NO_3^-多くの地点で有意な変化はなかった。 4.環境の保全や安全性の確保等から霧の消滅技術の開発が望まれている。霧の発生を抑制し霧を消滅する消霧装置の開発,室内実験・屋外実験を行い,霧の消滅機構を調べた。開発した消霧装置では,50m区間の視程を30%程度改善することが可能であった。
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