Research Abstract |
研究(1〜3)を互いに関連づけながら展開した.いずれも光,有機物ラジカルカチオン(RC),電子移動等が鍵となっており,溶液,ゼオライト界面,薄膜等,種々の環境におけるRCの反応性解明と応用が目的である. (1)光誘起電子移動反応で生ずるRCの電子構造の解明 新型有機RCの探索とその有機・物理化学的実験および理論計算による反応性の検討を行った.例えば,オキサテトラメチレンエタン(OTME)型RC(1^<・+>)や非古典的RC(2^<・+>)の電子構造(軌道相互作用)と分子構造について検討した. (2)光機能性界面を指向したゼオライト表面の新しい有機修飾 本研究課題の鍵であるゼオライト中でのRCの安定化と反応性について知見を得るべく,2-アニシル-2,5-ヘキサジエン(3)とゼオライトの反応を検討した.その結果,3^<・+>の環化で生成した6員環状RC(4^<・+>)がゼオライトに捕捉された4^<・+>@(Na,H)-ZSM-5を見出した.これは分離型RCがゼオライト中で観測された初めての例である.また,このRCはゼオライト種類によって安定性が大きく異なることがわかり,ゼオライトの新しい表面修飾の足がかりを得た. (3)開殻分子の発光機構解明と新規有機ELへの展開 ジフェニルメチレンシクロプロパン(5)の熱発光(lmax=501nm)の機構を検討した.溶媒効果の検討の結果,1)RC(5^<・+>とトリメチレンメタン(TMM)型RC6^<・+>)とラジカルアニオン(5^<・->,6^<・->)が同時に生成する時に発光が観測されること,2)発光は励起基質(5^*)由来ではなく,逆電子移動後に生じた励起TMM誘導体(6^<・・*>)由来であることが明らかになった.また,6^<・・*>を生成しうる前駆体ラジカルイオン対は,(6^<・+>/6^<・->)ではなく,他の組合せ,特に(6^<・+>/5^<・->)であることがDFr計算を用いた考察から示唆された.
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