2002 Fiscal Year Annual Research Report
ヒドリド還元を選択的に駆動する光触媒の高機能化―反応機構の解明と金属錯体・半導体ハイブリッド化―
Project/Area Number |
14050020
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Research Institution | Tokyo Institute of Technology |
Principal Investigator |
石谷 治 東京工業大学, 大学院・理工学研究科, 助教授 (50272282)
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Keywords | 光触媒 / ヒドリド還元 / 人工光合成 / NAD(P) |
Research Abstract |
植物の光合成において、水から汲み上げられた電子は、補酵素NAD(P)に2つずつ蓄えられる。この重要な反応を、人工的な光触媒を用いて行うことは、人工光合成の構築という観点のみならず、合成化学的にも重要な研究課題である。しかし、従来の分子間電子移動を経由する光触媒を用いると、光合成ではまったく生成しない副生成物しか得られない。また、NAD(P)モデルの面不斉還元を達成した触媒系は、これまで報告されていない。 我々は、独自にヒドリド還元だけを選択的に駆動するルテニウム錯体を用いた新規光触媒系を開発し、それをNAD(P)モデル化合物の還元に適用することにより、光合成と同じ位置選択性で生成物を得ることに成功した。この光触媒は、分子間電子移動を経由しない新しい作動システムで駆動し、従来の光触媒にない優れた特性を有しているため、不斉還元へも応用できる可能性が高い。 本年は、(1)本光触媒反応の素過程と機構を、詳しく検討した。重要な中間体である3級アミンを配位子として持つ種々のルテニウム錯体を合成し、その光反応性を明らかにした^2。その結果、従来用いていた金属錯体は、光配位子交換反応によりアミン錯体が生成する段階で、一部が副反応により分解していることがわかった。また、光配位子交換反応の収率を向上させるためには、脱離配位子を、ピリジンからアセトニトリルやDMFに変えることが有効でることを見いだした。この情報を基に、光触媒設計を行い、新規ルテニウム錯体を合成し、その光触媒特性を検討した結果、光触媒の耐久性を10倍以上向上することに成功した^3。 (2)第2級アミンを配位子として持つレニウム錯体を合成し、その光触媒特性を調べたが、ヒドリド錯体は収率良く生成しなかった。現在、第3級アミンが配位したレニウム錯体の合成を行っている。 (3)酸化物半導体上に結合できる配位子(PO_3)_2tpyを合成し、それをRu(tpy)Cl_3と反応することにより、目的の錯体の前駆体である[Ru{(PO_3)_2tpy}(bpy)Cl]^+の合成に成功した。
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[Publications] R.Arakawa, N.Kubota, T.Fukuo, O.Ishitani, E.Ando: "Study of the Ligand Substitution Reactions of cis, cis-[(bpy)_2(L)RuORu(L')(bpy)_2]^<n+> (L, L'=H_2O, OH^-, NH_3) using Electrospray Ionization Mass Spectrometry and ^1H-NMR"Inorganic Chemistry. 41. 3749-3754 (2002)
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[Publications] O.Ishitani, M.Ando, T.J.Meyer: "Dinitrogen Formation by Oxidative Intramolecular N---N Coupling in cis, cis-[(bpy)_2(NH_3)RuORu(NH_3) (bpy)_2]^4"Inorganic Chemistry. 42(5). 1707-1710 (2003)