2005 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
14076212
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Research Institution | Materials and Structures Laboratory |
Principal Investigator |
松本 祐司 東京工業大学, 応用セラミックス研究所, 講師 (60302981)
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Keywords | レーザー分子線エピタキシー / コバルト添加二酸化チタン / 磁気光学 / EXAFS, XANES / コンビナトリアル薄膜法 / XMCD |
Research Abstract |
【研究目標】 1回の実験で多種類の試料を合成・評価することができるコンビナトリアル分子線エピタキシー法を用いて、酸化物薄膜をベースとした新しいスピントロニクス機能を有する材料の高速探索と物性評価を行う。原子層レベルで制御されたエピタキシー技術により、酸化物磁性超格子やナノ構造をデザインし、構造と磁気物性との関係を高速、かつ系統的に調べる。 【研究成果1】Co:TiO_2/TiO_2人工格子によるキャリア注入と強磁性制御の実現 ルチル型二酸化チタン単結晶基板上に成長中の酸素雰囲気を変調させて作製したCo:TiO_2/TiO_2人工格子薄膜の構造と磁性特性について調べた。得られた人工格子薄膜のカー効果測定から、伝導層として挿入した酸素欠損TiO_2薄膜を作製した酸素圧の変化に対して、系統的に強磁性特性が変化しているのが分かった。しかし、XANES結果から、Co:TiO_2薄膜作製時には酸素圧を1mTorrに設定しているにもかかわらず、酸素圧変調プロセスにより、わずかながら金属Coの析出が認められた。一方、XMCD結果は、単なる金属Coの析出した膜とくらべ、大きな磁気異方性を示し、人工格子薄膜で観測された強磁性は、単なる金属コバルトに由来するものではく、Co:TiO_2薄膜の強磁性がキャリア誘起強磁性であることが示唆された。 【研究成果2】光電子分光による界面電荷移動の検証 キャリア濃度の高い酸素欠損のTiO_2薄膜から、絶縁体のCo:TiO_2薄膜へキャリアを注入する方法を新たに考案し、光電子分光によりこれを実証した。Nb:TiO_2単結晶基板上に膜厚の異なる絶縁性のCo:TiO_2薄膜を酸素圧1mTorr、基板温度300℃でPLD法により堆積し、内核光電子ピークのシフトから、各膜厚に対するCo:TiO_2薄膜内のフェルミ準位変化を求めた。その結果をCo:TiO_2薄膜の膜厚の贈大とともに、十数nmにわたって、0.5eV程度のTi2p内核ピークの明瞭なシフトが観測された。このことから、確かにNb:TiO_2/Co:TiO_2界面では電荷移動が起っており、Co:TiO_2薄膜内に10nm程度の膜厚まで、効果的にキャリアが界面から注入されていることが分かった。
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