Research Abstract |
核スピン濃度と電子スピン濃度を系統的に変化させた,さまざまなSiバルクおよび超構造をフローティングゾーン法や分子線エピタキシー(MBE)装置を用いて作製し,ホール効果,遠赤外吸収,ラマン分光を用いて評価し,その後,NMR測定,ESR測定,偏光フォトルミネッセンス測定を行うことからスピン物性を明らかにし,NMRではスピンコヒーレンスを長時間保つための量子操作法を開発し,量子演算に向けた量子操作と,スピンコヒーレンスを保つための量子操作を検討して,実際に25秒という世界最長の位相保持を実現した.ESRではパルス法を用いた電子スピンコヒーレンスを,バックグラウンドの29Si核スピン濃度の関数として定量的に明らかにした.電子スピンと核スピンの相互作用の解明は,量子コンピュータの実現にむけて不可欠であり,我々が有する同位体操作技術なしでは詳細は明らかにできない.よって,3種類のシリコン安定同位体を利用してESRとNMR測定を組み合わせることで電子スピン・核スピン相互作用の一部を明らかにした.フォトルミネッセンスでは,シリコンのバンドギャップ付近のエネルギーによるマッピングを行い,励起エネルギーの関数としての電子スピン編極度を調べた.現時点では,励起エネルギーに依存するスピン偏極度の違いは観測されていないが,その原因はレーザー波長の波長に幅があることが考えられる.今後は適当な光学フィルターを用いることで問題に対処する。さらに,III-V族を用いた結合型量子ドットでも,核スピンとの相互作用を明らかにした.
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