Research Abstract |
本計画研究の平成16年度の成果は,以下の5点にまとめられる. 1)軟X線領域の強光子場におけるH_2,D_2の解離性イオン化ダイナミクス Ti:Sapphireレーザーの27次高調波として発生させた高輝度軟X線(29.6nm,〜3×10^<12>W/cm^2,〜15fs)をH_2およびD_2分子に照射し,生成したイオンを飛行時間型質量分析器により検出し,軟X線領域の強光子場における分子のイオン化・解離ダイナミクスを調べた.運動エネルギースペクトルに現れるサイドピークのレーザー強度依存性を調べた結果,このサイドピークは,27次高調波の2光子過程によって生成していることが明らかとなった. 2)時間分解コインシデンス運動量画像法による強光子場中分子の高速核波束ダイナミクス 強レーザー場中で生成したCS_2^<2+>の高速核波束ダイナミクスを,コインシデンス運動量画像法をもちいたポンプ-プローブ法により実時間追跡し,CS_2^<2+>のポテンシャル曲面において,(i)協奏的解離過程:CS_2^<2+>→C+S^++S^+,および(ii)段階的解離過程:CS_2^<2+>→CS^++S^+→C+S^++S^+の2つの競合する過程が存在していることが見出された。 3)パルス列によって波形整形されたレーザーパルスによるエタノールの解離性イオン化反応 強レーザーパルス列のパルス数およびチャープをパラメターとして,強光子場中におけるエタノールカチオンのC-O結合とC-C結合切断の分岐比の変化を観測し,この二つの競合する過程に対するパルス波形の効果を明らかにした. 4)デバイ遮蔽モデルに基づくレーザープラズマ中の多電子原子・分子の電子状態 レーザープラズマ中における重金属原子イオンの電子構造を明らかにするために,Debye遮蔽モデルに基づく多電子ハミルトニアンに2次のDouglas-Kroll変換に基づく相対論効果を取り入れた「相対論的Debye遮蔽モデル」を構築し,多参照CI法を用いた量子化学計算コードの開発を行った. 5)アニリン誘導体カチオンの強レーザー誘起化学反応 アニリンのオルト,メタ,パラ位のそれぞれにメチル基が配向した2-,3-,および4-メチルアニリンを対象とし,強レーザー誘起分解反応における置換基の効果を調べるために,生成したフラグメントイオンの質量スペクトルの測定,および,量子化学計算(MP2/UHF法)に基づく安定構造の推定を行った.その結果,炭素を7個含む質量数90付近のフラグメントイオンは,メチル基とアミノ基の相互作用の結果生成することが示された.
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