2004 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
14077207
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
染田 清彦 東京大学, 大学院・総合文化研究科, 助教授 (20206692)
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Keywords | 強レーザー場 / 分子軌道 / Kramers-Henneberger高振動数近似 / 混成軌道 |
Research Abstract |
高振動数強レーザー場中の二原子分子の量子化学計算を行い,強レーザーが化学結合に及ぼす影響について調べた.Kramers-Henneberger高振動数近似を量子化学計算に取り入れる方法論を開発した.それを用いて高振動数強レーザー場中に置いたHe二量体の分子軌道計算を行った.光子エネルギーhνが10原子単位,ポンデロモーティブ半径が1原子単位程度の条件下で二つのHe原子の間にレーザー誘起共有結合が生じることを見出した.強レーザー場中で歪んだ電子波動関数を分子軌道の概念にもとづいて解析し,レーザー光子場により共有結合が誘起される機構について考察した.強レーザー場ではHe原子の1s軌道エネルギーが交流シュタルクシフトにより上昇し,2p軌道エネルギーと接近する.そのため,二つのHe原子がレーザー偏光方向から近づいた場合,1sと2p原子軌道の混成が起こる.通常,二つのHe原子が接近した場合,左右両原子の1s原子軌道だけから二つの分子軌道が形成され,一方は結合性,他方は反結合性となり,その両方に4個の電子が配置されるので化学結合は形成されない.強レーザー場中では,He原子の1s-2p混成のため,左右両原子から1sおよび一つの2p原子軌道が分子軌道形成に参画し,計4個の分子軌道が形成される.そのうち最もエネルギーの低い結合性軌道と,次にエネルギーの低い非結合性軌道に4個の電子が配置され,共有結合が形成される.すなわち,レーザー場の作用による1s-2p混成のお蔭で反結合性軌道が非結合性軌道に変換され,He原子間に共有結合が生じたと解釈できる.
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Research Products
(1 results)