2002 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
14081207
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Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
島崎 琢也 慶應義塾大学, 医学部, 助手 (00324749)
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Keywords | 神経幹細胞 / gp130 / EGF / Gab1 / オリゴデンドロサイト前駆細胞 / olig2 / アストロサイト / GFAP |
Research Abstract |
gp130、そして神経幹細胞のmitogenであるEGFのレセプターの下流で働くシグナル伝達分子であり、MAP kinase経路の活性化に関与しているGab1の欠失変異体における神経幹細胞を含めた神経系前駆細胞の発生を、細胞生物学的に、そして組織学的に解析した。Gab1のホモ欠失変異体(gab-/-)は胎生16日目までに胎盤の異常により死亡してしまう故に、まず、胎生14日目の線条体における神経幹細胞の数をneurosphere法によって野生型と比較したところ、FGF-2に依存的なneurosphere形成に顕著な差は見られなかったが、EGF依存的なneurosphere形成能はほとんど消失していた。また、この時期に脊髄で現れ始めるオリゴデンドロサイト前駆細胞の数をolig2,sox10およびPLP遺伝子のin situ hybridizationによって測定したところ減少していた。しかしながら、ニューロンの分化および生存に変化は見られなかった。また、Gab1のホモ欠失変異体(gab-/-)胎生12日目の脊髄におけるオリゴデンドロサイト前駆細胞の数をolig2タンパク質の免疫組織化学染色によって野生型と比較したところ、胎生14日目のin situ hybridizationと同様に有意に低下していた。そして、脊髄における細胞増殖をBrdUの取り込みにより測定したところ、gab-/-胎仔では有意な低下が観察された。しかしながら、TUNEL法によって検出されるアポトーシスには変化が見られなかった。さらに、ヘテロ欠失変異体(gab+/-)の成体の側脳室周囲に存在している神経幹細胞の数を、これもneurosphere法によって調べたところ、野生型に比べて約80%その数が増加していた。また、gp130を介したシグナルによってその発現が亢進されるGFAPの発現は生後7日目の脊髄で上昇していた。一方、胎生14日目の脊髄をCNTF存在下で単層培養し、アストロサイトおよびオリゴデンドロサイトの分化を観察したところ、gab-/-細胞は野生型に比べてアストロサイトの分化マーカーであるS100とGFAPの発現が亢進していた。以上の結果から、Gab1が主に生後から成体に至るまでの神経幹細胞の維持に負に作用していることが明らかになった。また、胎生期では主にGab1がオリゴデンドロサイト前駆細胞を含めた神経系前駆細胞の増殖に必要であり、その一方でアストロサイトの分化あるいは成熟を抑制することが明らかになった。
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[Publications] Murayama, A., Matsuzaki, Y., Kawaguchi, A., Shimazaki, T., Okano, H.: "Flow cytometric analysis of neural stem cells in the developing and adult mouse brain"J. Neursci. Res.. 68. 837-847 (2002)
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[Publications] Okano, H., Yoshizaki, T., Shimazaki, T., Sawamoto, K: "Isolation and transplantation of dopaminergic neurons and neural stem cells"Parkinsonism Relat Disord. 1. 23 (2002)
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[Publications] Chojnacki, A., Shimazaki T., Gregg, C., Weinmaster, G., Weiss, S.: "Glycoprotein 130 signaling regulates Notch1 expression and activation in the self-renewal of mammalian forebrain neural stem cells"J. Neursci.. 23. 1730-1741 (2003)