Research Abstract |
自由エネルギーに基づいた塩基配列設計の有効性の検証 従来の塩基配列手法の多くは,相補対の数BPを主な指標として用いていた.(1)では,最小自由エネルギーΔGminに基づく塩基配列手法を提案した.本研究では,この最小自由エネルギーに基づく塩基配列設計がこれまでのBPでの設計手法と比較して,計算の信頼性の立場から,本当に有効であるかどうかを化学実験によって検証した.具体的には,BPによる評価が同じであるが,最小自由エネルギーの異なる複数の一本鎖塩基配列対を用意し,一般的な条件下でハイブリダイゼーション反応を行い,二本鎖の形成が行われているかを電気泳動によって確認した.二本鎖が形成された場合は,ゲル内の移動度が減少し,一本鎖の場合に比べて,異なるバンドとして検出できる.実験の結果から,BPに比べて最小自由エネルギーによる評価の方が適切であること,また,ハイブリダイゼーションにより二本鎖を形成するためには,計算される最小自由エネルギーの絶対値がある閾値以下とならなくてはならないことがわかった. DNAタイルのための自由エネルギーを考慮した塩基配列設計アルゴリズムの提案 複数の一本鎖DNAを巧みに交叉させながら相補結合させることで作られるDNAタイルは,複数の粘着末端(一本鎖DNA)を持っており,他のタイルの相補的な粘着末端と特異的に結合することで,より大きな構造を形成することが可能である.DNAタイルによってタイルパターンの生成を制御するためには,DNAタイルの構成要素となる複数の一本鎖DNAの塩基配列を適切に設計する必要があるが,現状では,複数の一本鎖DNAを用いて複雑なタイル構造を生成するための塩基配列設計手法はほとんど確立されていないといってよい. 本研究では,一本鎖DNA間の結合性の尺度として自由エネルギーを用いて,DNAタイルの構成要素となる複数の一本鎖DNA間の結合安定度を予測し,望みの相補結合はより安定に,望まない相補結合はより不安定になるような塩基配列の設計手法の開発を行った.提案した手法をYanらによって提案された4×4タイルに適用して,Yanらの設計したDNAタイルとの安定性について議論した.提案した評価尺度が実際に安定性の尺度として適切であるかの化学実験的検証が必要ではあるが,従来の塩基配列設計手法と比較して,容易により安定なDNAタイルを設計できる可能性があることを示した.
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