2003 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
14102012
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
酒井 広文 東京大学, 大学院・理学系研究科, 助教授 (20322034)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
峰本 紳一郎 東京大学, 大学院・理学系研究科, 助手 (90323493)
平澤 正勝 東京大学, 大学院・理学系研究科, 助手 (90262162)
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Keywords | 非同軸光パラメトリック増幅 / キャリアエンベロープ位相 / 絶対位相 / 可視-近赤外領域 / 高次高調波発生 / コヒーレント真空紫外光 / アト秒パルスの発生と計測 / 偏光ゲート法 |
Research Abstract |
1.可視-近赤外領域での研究目的は、(1)極限的超短パルスの発生、(2)超短パルス特性の新計測法の開発、(3)遷移状態分光法の確立の3点である。 (1)既に、非同軸パラメトリック増幅(NOPA)法を用いて、3.9フェムト秒の最短光パルスの発生に成功しているが、本年度は複数のNOPA装置を組み合わせ、位相整合領域を広げることによって、一層の広帯域化を実現する超広帯域発生装置を開発中である。 (2)5フェムト秒以下の超短光パルスでは、光強度の時間変化だけでなく、その絶対位相(キャリアエンベロープ位相)を確定することが様々な応用実験で重要となる。本研究グループでは、さきにこの絶対位相を光パラメトリック過程を用いてロックすることに成功したが、本年度はさらにスペクトル干渉法による位相復元法とフィードバック機構を導入し、光パルス列の絶対位相を、1時間程度の長時間にわたって安定させることに成功した。またこの装置により、任意の絶対位相をもつ光パルスを発生させることが可能となった。 (3)上記の超短光パルスを光源とし、種々の物質の超高速分光を行った。特に、電子写真技術で光検出デバイスとして重要な役割を果たす、フタロシアニンについて超高速分光を行った。ポンプープローブ法を用いて電荷移動励起状態を励起し、光キャリア発生のメカニズムを実時間振動分光の視点から解明することに成功した。 2.真空紫外領域では高次高調波を用いたアト秒パルスの発生と計測を主要な研究目的としている。 (1)高次高調波は基本波が直線偏光の時に発生する。したがって、基本波のピーク強度付近でのみ直線偏光となるように偏光状態を制御できれば、20フェムト秒以下程度のパルスを用いてもアト秒台のパルスを発生できる可能性がある。これは偏光ゲート(Polarization Gate : PG)法と呼ばれる手法であるが、本年度はこのPG法の原理実証実験に成功した。現在さらに、プラトー領域とカットオフ領域での効果の違い、位相整合の影響などの詳細を調べる実験を進めている。また、中空ファイバーとプリズム対さらにはチャープミラーを併用することによりアト秒パルスの発生に必要な20フェムト秒以下級の光パルス発生にも成功した。 (2)分子(N_2,O_2,CO_2)の回転周期よりも短いフェムト秒パルスで回転波束を励起し、非断熱的に配向した分子中での高次高調波発生に成功した。配向した分子の分子軸と平行な直線偏光を用いることにより、高調波出力が著しく増大する。既存の理論で説明できない新現象も発見した。上記のPG法に配向した分子を利用すれば電子の再衝突時の実効的な衝突断面積を小さくできるので、PG法の実験条件が緩和されるだけでなく、希ガス原子よりも高効率な媒質として利用できる可能性がある。 (3)量子力学的な理論に基づいた高次高調波発生の数値計算コードを開発した。これにより、実験と理論の比較が可能となった。
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Research Products
(8 results)
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[Publications] H.Sakai, J.J.Larsen, I.Wendt-Larsen, J.Olesen, P.B.Corkum, H.Stapelfeldt: "Nonsequential double ionization of D_2 molecules with intense 20 fs pulses"Physical Review A. Vol.67. 063404-1-063404-4 (2003)
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[Publications] H.Sakai, S.Minemoto, H.Nanjo, H.Tanji, T.Suzuki: "Orientation of polar molecules with combined electrostatic and pulsed, nonresonant laser fields"The European Physical Journal D. Vol.26. 33-37 (2003)
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[Publications] Shinichirou Minemoto, Haruka Tanji, Hirofumi Sakai: "Polarizability anisotropies of rare gas van der Waals dimers studied by laser-induced molecular alignment"Journal of Chemical Physics. 119・15. 7737-7740 (2003)
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[Publications] Takayuki Suzuki, Shinichirou Minemoto, Tsuneto Kanai, Hirofumi Sakai: "Optimal control of multiphoton ionization processes in aligned I_2 molecules with time-dependent polarization pulses"Physical Review Letters. (発表予定). (2004)
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[Publications] Takayuki Suzuki, Shinichirou Minemoto, Hirofumi Sakai: "Optimal control of multiphoton ionization processes in I_2 molecules with time-dependent polarization pulses (in Japanese)"The Review of Laser Engineering. 31・11. 762-769 (2003)
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[Publications] Masakatsu Hirasawa, Yuzo Sakazaki, Hiroki Hane, Takayoshi Kobayashi: "Direct observation of vibrational dynamics in tin phthalocyanine"Chemical Physics Letters. (発表予定). (2004)
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[Publications] X.-J.Fang, T.Kobayashi: "Evolution of a super-broadened spectrum in a filament generated by an ultrashort intense laser pulse in fused silica"Applied Physics B. 77・2-3. 167-170 (2003)
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[Publications] X.-J.Fang, T.Kobayashi: "Self-stabilization of carrier-envelope phase of an OPA Verified by a photonic crystal fiber"Optics Letters. (発表予定). (2004)