2004 Fiscal Year Annual Research Report
分子・細胞・個体レベルにおける動物の光環境応答とサーカディアンリズム
Project/Area Number |
14104003
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
深田 吉孝 東京大学, 大学院・理学系研究科, 教授 (80165258)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
岡野 俊行 東京大学, 大学院・理学系研究科, 講師 (40272471)
小島 大輔 東京大学, 大学院・理学系研究科, 助手 (60376530)
広田 毅 東京大学, 大学院・理学系研究科, 研究拠点形成特任教員 (50372412)
和田 恭高 東京大学, 大学院・理学系研究科, リサーチフェロー (90376559)
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Keywords | サーカディアンリズム / 概日時計 / MAPキナーゼ / クリプトクローム / リン酸化 / 転写調節 / E4BP4 / カゼインキナーゼ1 |
Research Abstract |
交付申請書に記載の研究実施計画に沿って研究を遂行し、下記の成果を得た。 (1)概日時計の発振におけるMAPキナーゼ経路の機能を知るため、時計発振系の最も主要な構成因子の一つであるクリプトクローム(CRY)に対するMAPキナーゼ(ERK)の作用を調べた。その結果、CRY1/2いずれもERKの基質となり得ることがわかった。次に、in vitroにおいてERKによってリン酸化したCRYタンパク質を分析した結果、CRY1ではSer247が、CRY2ではSer265およびSer557が、それぞれリン酸化されることが判明した。これらのリン酸化がCRYの転写抑制活性に及ぼす影響を調べるためさらに、リン酸化部位を置換した変異タンパク質を作製し、転写アッセイを行った。その結果、CRY1のSer247あるいはCRY2のSer265を消失させた変異体において、転写抑制能が減弱した。以上から、ERKはCRYのリン酸化を介して時計の発振系を直接調節している可能性が示唆された。 (2)上記ERKの解析と並行して、位相後退(時計が遅れること)に関与すると推定されるE4BP4分子の解析を行った。具体的には、E4BP4を特異的に認識する抗体を作成し、E4BP4タンパク質の動態を調べた。その結果、E4BP4のタンパク質量は、概日時計の時刻が後退する際に特異的に増大することがわかった。さらに、Ser182残基が未知のタンパク質キナーゼによってリン酸化を受けること、カゼインキナーゼ1εによる多段階リン酸化を受けプロテアソーム系依存的に分解されることが判明した。これらの結果と、E4BP4が時計遺伝子Per2の転写を抑制することを考え併せると、光によるE4BP4の誘導とそれに続くリン酸化が時計遺伝子Per2の転写抑制を介して発振サイクルを巧妙に調節し、光刺激による適切な時計位相の遅れをひき起していると考えられた。
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