Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
滝井 健二 近畿大学, 水産研究所, 教授 (60197225)
宮下 盛 近畿大学, 水産研究所, 教授 (80088658)
村田 修 近畿大学, 水産研究所, 教授 (70088657)
細川 秀毅 高知大学, 農学部, 教授 (40036744)
田中 克 近畿大学, 農学部, 教授 (20155170)
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Research Abstract |
本年度の特筆すべき業績は,本学水産研究所で種苗生産・養成したクロマグロ親魚が6月下旬に産卵し,その受精卵をふ化させてから稚魚にまで飼育する完全養殖に成功したことである。これは世界ではじめての快挙で,今後のクロマグロ資源の増強のみならず,養殖産業の発展に大きな福音になる。 他の業績についてみると,成熟・産卵促進セクションでは,まず,環境条件による影響を検討するために,多項目水質計測機を大島(串本)および奄美大島実験場に設置し,精度の確認と問題点の解決に努めた。次いで,定期的な生殖腺の調査から,高水温の奄美実験場では♀3歳魚で産卵する可能性と,♂2歳魚における精巣精子の高い運動率を確認し,人工受精と精子の凍結保存の技術開発に不可欠で重要な知見を得た。初期発育・種苗生産セクションでは,完全養殖に成'功した仔稚魚を用いて検討し,ふ化後10日までの仔魚の飼育適水温は24〜28℃で,ふ化後20〜23日の仔魚〜稚魚への変態期には,RNA/DNA比が著増し低酸素ストレス耐性が低下すること,一方,稚魚期ではRNA/DNA比を高く維持するとともに,コルチゾル-ストレス反応が発現することなどを明らかにした。また,鰾形成と皮膚粘液細胞の発達に関する貴重な知見も得た。栄養素代謝・飼料開発セクションでは,稚魚期の麻酔に200ppmフェノキシエタノールが適しており,代謝エネルギーは34.1cal/g BW/dayと高く,連続して4日間以上の絶食は致命的で,柔らかい物性の飼料やアワビエキスを好み,全長30cmまでは体長の伸び,筋肉合成,代謝酵素活性の上昇を,その後は肥満度と筋線維直径の増大,脂質蓄積を優先させることなどを明らかにした。また,味覚器は特定のアミノ酸核酸関連物質などに応答し,それらの閾値は比較的高いことも分かった。 以上の業績は国内外の学術雑誌に投稿する予定で,現在,準備を進めている。
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