2002 Fiscal Year Annual Research Report
グローバリゼーション状況下における芸術の論理と倫理
Project/Area Number |
14201005
|
Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (A)
|
Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
藤田 一美 東京大学, 大学院・人文社会系研究科, 教授 (60065480)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
尼ヶ崎 彬 学習院女子大学, 国際分化交流学部, 教授 (70143344)
浜下 昌宏 神戸女学院大学, 文学部, 教授 (60208577)
戸澤 義夫 群馬県立女子大学, 文学部, 教授 (50011383)
長野 順子 神戸大学, 文学部, 教授 (20172546)
西村 清和 埼玉大学, 教養学部, 教授 (50108114)
|
Keywords | 正統と異端 / カトリシズム(普遍主義)と相対主義 / グローバリゼーションとローカリゼーション / 文明の衝突? / 多元主義的文化論と共存の論理 / エティカ・コスモポリティカ / インターナショナルとエスニック / 芸術の論理と倫理 |
Research Abstract |
本年度は、研究全体の立案に努めつつ、計三回の研究会を開催した。第一回の研究会では研究代表者が総説と問題提起を行なった。globalをはじめとする基本的語彙の源泉と展開をたどりつつ、グローバリゼーションが進行する今日の状況を極めて広い歴史的スパンのうちで捉えながら、グローバリゼーションを単純で一元的な「世界標準化」として捉えようとする性急な見方が一面的で不十分であることが示された。グローバリゼーションは、そのような把握をはるかに超えた、錯綜したプロセスとして捉えなければならないだろう。 続く二回の研究会では、初回で提示・議論された見解が、具体的な事例の研究によってさらに深められたといえる。近代における伝統の創出としての<民謡>の成立とその後の展開を、地方と中央という地誌的な問題と関連させて論じた研究、また、絵葉書が、かつては事件やイベントの有様を伝えるメディアとしての役割を担っていたことを現物の資料を挙げながら跡づけた研究が披露された。これらの研究発表とそれにともなう質疑応答で明らかになりつつあるのは、グローバリゼーションの過程の中においては、他地域との関係のありかたについての問題意識からむしろそれぞれの地域の固有性の自覚が高まってゆくこと、そして、世界化の媒体そのものの社会全体における位置づけが、時には急激に変転していくということである。 また、招聘外国人研究者による特別講演会を開催した。演者は前国際美学連盟会長で、スロベニアのリュブリヤーナ大学のアレシュ・エルヤヴェッツ氏である。『グローバリゼーション・プロセス美学を事例に』と題された講演は、国際美学連盟を運営してきた経験に基づきつつ、急速に変貌しつつある美学の学問的状況を的確に捉え表現し、かつそこに展望と提言を示したものであった。直接の当事者でもある日本の美学研究者たちに強い問題意識を喚起し、活発な質疑が交わされ、研究の視野がさらに拡大された。
|
Research Products
(12 results)
-
[Publications] 小穴 晶子: "A noteworthy anonymous letter in the quarrel of the Bouffons"日本音楽学会創立50周年記念国際大会報告書. (印刷中). (2003)
-
[Publications] 小穴 晶子: "Une notable lettre anonyme dans la Querelle des Bouffons"Horizons philosophiques. Volume13 no2(印刷中). (2003)
-
[Publications] 塚田健一: "ガーナ独立後の文化政策と「著作権」制度の変容-中部州ファンティ社会の音楽変化をめぐって-"アフリカ音文化における伝統の形成と変容:その社会的要因の研究(川田順造編). (印刷中). (2003)
-
[Publications] Tsukada Kenichi: "Traditional "Copyright" in Fante Music and Nkrumah's Cultural Policy in Postcolonial Ghana"The Proceedings of the International Congress of the Musicological Society of Japan. (印刷中). (2003)
-
[Publications] 馬場 朗: "芸術享受における公衆的自然の生成:近代的鑑賞者概念の一源泉としてのルセール音楽批評の「国の民」概念"群馬県立女子大学紀要. 24. 31-54 (2002)
-
[Publications] 吉田 憲司: "『再興』という名の『創造』-アフリカ・ザンビアにおける王たちの祭"岩波講座天皇と王権を考える 第6巻 表徴と芸能. 6. 273-305 (2003)
-
[Publications] 松田 聡: "モーツァルトの《劇場支配人》K.486における終結ヴォードヴィル -「ブッフのソロ」のもつ喜劇的効果に関する考察-"大分大学教育福祉科学部研究紀要. 第24巻第2号. 239-251 (2002)
-
[Publications] 松田 聡: "アンサンブル楽曲におけるモーツァルトの作劇術 -《劇場支配人》K.486の第3番の三重唱を例に-"大分大学教育福祉科学部研究紀要. 第25巻第1号. 1-13 (2003)
-
[Publications] 吉田 憲司: "ルーヴルのなかのアフリカ-文化遺産の保存と展示をめぐるポリティックス-"民族藝術. 19(印刷中)(近刊).
-
[Publications] 稲賀 繁美: "異文化との遭遇と表象の変容そして崩壊=オリエンタリズムからプリミティヴズムへ"『印象派とその時代:モネからセザンヌへ』埼玉県立美術館. 58-60 (2002)
-
[Publications] 稲賀 繁美: "越境する学術:20世紀前半の東アジアの遺蹟保存政策"美術フォーラム21. 6. 40-46 (2002)
-
[Publications] T.L´AMINOT, 馬場 朗他: "Modernite et perennite de Jean-Jacques Rousseau"Honore Champion, Paris. 366 (2002)