2002 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
14201006
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Research Institution | Tokyo National University of Fine Arts and Music |
Principal Investigator |
松尾 大 東京芸術大学, 美術学部, 教授 (00119364)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
小松 弘 早稲田大学, 文学部, 教授 (60282414)
大熊 治生 倉敷芸術科学大学, 芸術学部, 教授 (80279025)
井村 彰 東京芸術大学, 美術学部, 助教授 (70223344)
平山 敬二 沖縄県立芸術大学, 美術工芸学部, 教授 (50189867)
椎原 伸博 実践女子大学, 文学部, 助教授 (20276679)
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Keywords | 芸術 / 公共性 / 公共圏 / パブリックアート / メセナ / 文化財 / 美学 |
Research Abstract |
本研究は、芸術の公共性に関する理論的アプローチと、芸術の諸領域における公共性の諸相を分析する実践的アプローチの二方向からなり、両者の双方向的な研究討議によって当該テーマを究明しようとするものである。三年計画の初年度にあたる今年度は、まずは研究分担者相互でこの研究の出発点となる問題認識の共有をはかると同時に、それぞれの専門領域における取り組みの現状を把握し、問題の所在や今後の研究の可能性について情報を交換することを目標として、研究の基本的な枠組みを構築することに専念した。そのための方策として、研究会を開いて研究発表や討論を交わすのはもちろんのこと、メーリングリスト等を活用して意見交換や情報交換を行い、活発な共同研究を展開した。研究会における成果としては、公共性という概念に関する今日的な理解の諸相とその芸術との関係性を確認する作業(井村)が行われ、国際的な規模の現代美術の展覧会やアート・プロジェクト等の現状報告とそこに見られる公共性理解の分析(林)や、それを受けての今後の展開の可能性(椎原)が呈示された。また、地域における美術プロジェクトというかたちで公共的な芸術活動を展開する実践者の立場からの報告(渡辺)によって、当該テーマの最前線におけるさまざまな問題が浮き彫りにされた。これらの研究成果において、現代における公共性概念のofficialからopenへの重心の移動は、制作者から受容者へ完結的・恒常的な芸術作品から仮設的作品や受容者参加的作品へといった芸術現象におけるさまざまな転換の徴候と連動していることが確認された。それは、文化財としての芸術作品の共有の問題(佐藤)や,企業メセナという観点からの芸術文化(熊倉)を論じた個別研究にも共通していえることであり、これらの成果を次年度以降の研究に有機的かつ批判的に接続していくこととした。
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Research Products
(13 results)
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[Publications] 金子 一夫: "戦前と戦後の間"近代画説(明治美術学会誌). 第11号. 5-13 (2002)
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[Publications] 熊倉 純子: "企業メセナの視点から見た、日本の地域のうごき"文化経済学(文化経済学会誌). 第3巻・3号(3月刊行予定). (2002,2003)
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[Publications] 小松 弘: "バイオグラフ期のグリフィス"NFCニューズレター(東京国立近代美術館フィルムセンター). 第47号. 5-6 (2003)
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[Publications] 佐藤 道信: "「文化財」の理念的背景-何を守り、なおすのか"美術フォーラム(醍醐書房). 第6号. 47-50 (2002)
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[Publications] 佐藤 道信: "「美術史」-歴史化の要件"台湾2002年東洋絵画史学会プロシーディングス(国立台湾大学). 220-225 (2002)
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[Publications] 椎原 伸博: "「かわいい夏休み」村上隆個展「Kaikai Kiki」村上隆キュレーションによるグループ展示「ぬりえ(Coloriage)」"カリスタ(東京芸術大学美術学部美学研究室). 第9号. 65-75 (2002)
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[Publications] 椎原 伸博: "現代美術に置ける戦略と戦術 村上隆とトーマス・ヒルシュホルンをめぐって"実践女子大学文学部紀要. 第45集(3月刊行予定). (2003)
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[Publications] 林 卓行: "Waiting for Art(2),(3),(4),(5)"10+1(INAX出版). No.27-30. (2002)
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[Publications] 林 卓行: "むきだしになったレディメイド"文學界(文芸春秋社). 56(4). 355-357 (2002)
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[Publications] 林 卓行: "彩られた対話、彩られたモダン"文學界. 56(10). 283-285 (2002)
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[Publications] 林 卓行: "いずれにせよ、やがてスペクタクルに至る:ユダヤ博物館(ベルリン)とドクメンタ11"カリスタ(東京芸術大学美術学部美学研究室). 第9号. 76-82 (2002)
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[Publications] 松尾 大: "カントにおける美的理念の概念の修辞学的基底"東京芸術大学美術学部紀要. 第38号. 5-24 (2002)
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[Publications] 林 卓行 (藤枝晃雄監修): "現代芸術論〔担当箇所〕真剣な操作:「リアルな芸術」のありか"武蔵野美術大学出版局. 144(27-46) (2002)