2002 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
14201046
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Research Institution | National Research Institute Cultural Properties, Nara |
Principal Investigator |
花谷 浩 独立行政法人文化財研究所奈良文化財研究所, 飛鳥藤原宮跡発掘調査部, 主任研究官 (70172947)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
小池 伸彦 独立行政法人文化財研究所奈良文化財研究所, 飛鳥藤原宮跡発掘調査部, 主任研究官 (90205302)
小林 謙一 独立行政法人文化財研究所奈良文化財研究所, 埋蔵文化財センター, 文化財情報研究室長 (70110088)
黒崎 直 富山大学, 人文学部, 教授 (60000494)
豊島 直博 独立行政法人文化財研究所奈良文化財研究所, 平城宮跡発掘調査部, 研究員 (90304287)
清野 孝之 独立行政法人文化財研究所奈良文化財研究所, 平城宮跡発掘調査部, 研究員 (00290932)
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Keywords | 三燕 / 馬胄 / 縦長板胄 / 挂甲 / 帯金具 |
Research Abstract |
近年、遼寧省において相次いで出土した馬冑・馬甲で代表される重装騎兵の装備は、4世紀中葉〜後半の資料であるが、このような騎兵装備が、韓半島では5世紀初、日本列島においては、出土が非常に稀であるが、5世紀後葉に出現する。しかも、その間、特に馬冑において、時期とともに製作技術も変遷していく状況が認められるのである。また、人の冑に関しては、中国東北地方で出土した例には、椀を伏せた形をしたものと、いわゆる蒙古鉢形のものがあるが、韓半島においても2種の形態のものが出土しており、年代観やその形状の類似性等からみて、韓半島出土例の源流は中国東北地方にあるとみなしうる可能性が高まったといえよう。さらには、韓半島出土の甲冑では、鉄板を結合するのに、鋲ではなく釘によっている例があるが、中国東北地方出土冑に、釘結技法が確認される点からも、両地域の密接な関係を窺うことができよう。この形式の冑も、馬冑・馬甲と同様、日本列島では例外的な出土である。むしろ、これら北方系とされる装備のなかで、挂甲のみが多量に出土している点に、日本列島における当時の情勢や受容の事情が反映されていると考えられるのである。 一方、日本列島の古墳から出土する金属器のなかに、中国中原地域、三国時代西晋の墓から出土した帯金具と同工のものがあるが、日本の出土例とほぼ同時期と考えられる遼西地域の前燕の墓から出土する帯金具のなかにも同形式の帯金具が存在していることが確認できた。この事実は、製作地と渡来地の間では、地理的な条件の違いにかかわらず、約半世紀前後の時期差が存在しうる場合があることを示しており、日本列島の渡来系遺物の時期を考えるうえで、手がかりとなるものである。 なお、中国における既発表資料をもとに、遼寧省における三燕時代を中心とした墓葬の調査報告を収集し、日本語に翻訳するとともに、三燕墓葬のデータベースの作成に着手した。
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