Research Abstract |
本研究において,(1)熱水性鉱床における元素濃集・分散メカニズム,(2)風化作用における元素移動・分散メカニズムに関する分析的,実験的,及び理論的研究を行った.(1)では,黒鉱鉱床,金鉱床における鉱物生成メカニズム,熱水変質における元素移動に関する研究を行った.特に,硫酸塩鉱物の生成が熱水と海水との混合により生成されることをストロンチウム同位体組成,希土類元素組成をもとに明らかにした点が重要な成果である.この他に,熱水変質における希土類元素の挙動を明らかにし,希土類元素組成が地球化学探査の指標になることを示した.また,水-岩石反応実験を高温(300℃)で行い,アルカリ元素,アルカリ土類元素の地球化学的挙動を明らかにした.その結果,水-岩石反応の進行とともに,水溶液中のこれらの元素濃度が変化することがわかった.この結果より,黒鉱鉱床の生成に対して,海底下における水-岩石反応が重要であることが示された,(2)では,様々な岩石と土壌の化学的風化作用における主成分元素,微量成分(重金属,重元素),希土類元素の挙動を分析的,理論的研究により明らかにすることができた.例えば,火山灰土(黒ボク土,ローム土)の風化では,主成分元素,希土類元素共に溶解するが,重金属元素は,溶解,吸着し,主として水酸化鉄が吸着体として重要であることを明らかにした.花崗岩の化学的風化作用においては,主成分元素(アルカリ,アルカリ土類,Si)は,長石などのケイ酸塩鉱物の風化作用により溶解するが,希土類元素,重金属元素は,溶解と共に吸着もおこす.重金属現存御吸着は,主に水酸化鉄により生じ,希土類元素,アルカリ土類元素は,イライト,スメクタイト,ヴァミキュライトといった粘土鉱物によることが明らかにされた.
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