2003 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
14204058
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Research Institution | University of Yamanashi |
Principal Investigator |
平岡 賢三 山梨大学, クリーンエネルギー研究センター, 教授 (80107218)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
和田 晃 山梨大学, クリーンエネルギー研究センター, 博士研究員
佐藤 哲也 山梨大学, クリーンエネルギー研究センター, 助教授 (60252011)
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Keywords | 水素原子 / トンネル反応 / 暗黒星雲 / 化学進化 |
Research Abstract |
原子トンネル反応の障壁は、H原子と反応分子間の遠心性障壁、粒子を捕捉する共鳴状態は、分子の集合系における集団振動励起が考えられる。このモデルで、10K付近において反応速度が極大を示すことを理論的解析により明らかにした。暗黒星雲の中心部は、10Kという極低温に保たれるが、星雲内部を貫通する宇宙線の作用で、H原子の関与するトンネル反応、紫外線有機光化学反応、宇宙線による放射線化学反応、などが協同的に起こり、それらの相対的寄与の見積もりが最重要課題となっている。しかし、これまでこの点に関する定量的取り扱いは皆無であった。本課題においては、H原子及びD原子とホルムアルデヒド、及びメタノールとのトンネル化学反応を詳細に検討し、これらの課題に関する解明を試みた。H原子とH_2CO及びCH_3OHとH(D)との反応性が低いこと、反応[H十H_2CO]によりCOとCH_3OHが生成すること、反応[H十CH_3OH]ではH_2COやCOが生成しないこと、しかし、水素引き抜き反応、H(D)+CH_3OH→CH_2OH+H_2(HD),とこれに続く再結合反応でメタノールが再生されること、などを突き止めた。また、H原子に比べて、D原子のトンネル化学反応が際立って遅いこと(同位体効果)が分かった。さらに、トンネル化学反応の反応効率、暗黒星雲内での紫外線照射量、宇宙線の照射量、の3因子を総合的に比較検討することによって、暗黒星雲内における物質の進化においては、H原子で引き起こされる原子トンネル反応、紫外線誘起光化学反応、そして、宇宙線による放射化学反応が、暗黒星雲内の化学進化にいずれも極めて重要な寄与を及ぼす、という見解を得た。これは、これまでの星間化学研究の歴史の中での大きな成果である。これらの研究成果は、成書"Atom Tunneling Phenomena in Physics, Chemistry, and Biology" (T.Miyazaki編、Springer、2004)に著述された。
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Research Products
(7 results)
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[Publications] K.Hiraoka, K.Takao, F.Nakagawa: "Thermochemical stabilities of the gas-phase cluster ions H_3C^+(N_2)_n"Int.J.Mass Spectrom.. 227. 391-399 (2003)
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[Publications] K.Hiraoka, T.Shoda, I.Kudaka: "Gas-phase study of the clustering reactions of C_2H_5^+, s-C_3H_7^+ and t-C_4H_9^+ with CO_2 and N_2O : isomeric structure of C_2H_5^+"J.Phys.Chem.A. 107. 775-781 (2003)
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[Publications] K.Hiraoka, T.Mizuno, D.Eguchi: "Gas-phase ion/molecule reactions in octafluorocyclobutane"J.Chem.Phys.. 116. 7574-7582 (2002)
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[Publications] K.Hiraoka, R.Hamamoto, K.Mori: "Secondary ions produced by 400eV He^+ ion impact on solid films composed of binary mixtures of Ar/Xe, Ar/N_2, and Ar/O_2 at 7 K"Int.J.Mass Spectrom.. 218. 173-180 (2002)
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[Publications] K.Hiraoka, T.Sato, S.Sato: "Formation of formaldehyde by the tunneling reaction of the H with solid CO at 10K revisited"Astrophysical J.. 577. 265-270 (2002)
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[Publications] K.Hiraoka, T.Sato, M.Watanabe: "Secondary ions produced by 400 eV He^+ ion impact on N_2 and O_2 thin films at 8 K"J.Chem.Phys.. 117. 6252-6258 (2002)
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[Publications] Kenzo Hiraoka: "Atom Tunneling Phenomena in Physics, Chemistry, and Biology"Springer. 27 (2004)