2004 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
14204058
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Research Institution | University of Yamanashi |
Principal Investigator |
平岡 賢三 山梨大学, クリーンエネルギー研究センター, 教授 (80107218)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
佐藤 哲也 山梨大学, クリーンエネルギー研究センター, 助教授 (60252011)
和田 晃 山梨大学, クリーンエネルギー研究センター, 研究員 (70377604)
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Keywords | 低温トンネル反応 / メタノール / ホルムアルデヒド / 暗黒星雲 / 化学進化 / シリコン / 電子衝撃 |
Research Abstract |
宇宙の化学進化において、10Kの低温にある暗黒星雲において、活発な化学進化が進行していることが、電波分光で明らかとなった。特に興味をもたれたのが、星間塵中に含まれるホルムアルデヒド並びにメタノールの生成機構であった。1970年代に、トンネル反応を含むCO分子の逐次水素原子付加反応、CO→HCO→H2CO→H2COH→CH3OHが提案された。我々は、極低温反応測定装置を世界に先駆けて製作し、10Kにおいて、固体COとH原子の固相トンネル反応を観測した。その結果、H原子とCOの反応性は、エチレンやシランに比べて桁違いに低く、宇宙におけるメタノールの存在量を説明するには無理があるという結論を得た。この実験結果は、メタノールの生成源がCOではないという従来の常識を覆すもので、世界の天文化学者に大きな衝撃を与えた。我々は、さらに、ホルムアルデヒド、並びにメタノールと水素原子及び重水素原子の反応を詳細に検討し、種々の反応生成物の収量と、複雑な反応の分岐比に関する詳細な実験を行い、COからメタノール生成に到る反応機構の詳細を世界で初めて確立した。我々の結論、すなわち、メタノールはCOを主なる前駆体としない、という結論は、メタノール生成に否定的なもので、メタノール生成に関する新たな生成機構の提案が必要である。そこで、我々は、極低温における星間塵のシミュレーション実験として、H2O/CH4の混合固体薄膜に電子線照射実験を行った。驚くべきことに、50eVの電子線照射で、メタノールが主生成物として生成することが分かった。また、その収量は、照射した電子に対して、高い収率を示した。これは、暗黒星雲における物質進化のエネルギー源としての宇宙線の重要性を強く示唆する。宇宙線と物質の相互作用の主役は、数10eVのエネルギーをもつ二次電子(δ線)である。この電子が、宇宙における物質進化に主要な役割を果たす、という画期的な実験結果が世界で初めて得られた。この成果により、昨年度、今年度のAOGS国際会議、並びにPACIFICHEM2005ハワイ学会に招待講演を依頼された。 低温化学反応に関する応用研究については、H原子とシラン薄膜との反応で、シリコン薄膜の合成実験を行っている。この実験においては、アモルファス膜が生成したが、欠陥が多く実用化には向かないことが予想された。そこで、H原子照射に加えて、シリコン膜に電子線照射実験を行った。この結果、H原子照射に比べて、桁違いの膜成長速度で結晶性の高い高性能なシリコン膜を作成できることが分かった。
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Research Products
(7 results)