2002 Fiscal Year Annual Research Report
QTLマッピング法を利用した送粉・繁殖システムの実験進化生態学的研究
Project/Area Number |
14204077
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (A)
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
矢原 徹一 九州大学, 理学研究院, 教授 (90158048)
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Keywords | 送粉シンドローム / 有性生殖 / QTLマッピング / キスゲ属 / ヒヨドリバナ / 種分化 |
Research Abstract |
本研究の目的は、実験集団による進化過程の実測と、QTLマッピング法による遺伝解析という2つのアプローチを統合し、送粉シンドロームの進化機構、および有性生殖の適応的意義を解明することにある。研究材料としては、昼咲きの蝶媒花種と夜咲きの蛾媒花種を含むキスゲ属、および有性型と無性型を含むヒヨドリバナを用いる。 本年度は、送粉シンドロームの進化に関しては、キスゲ属2種のF1世代を育成し、QTLマッピングやF2世代育成に備える準備段階の年度にあたる。具体的には、以下の研究を実施した。 ●キスゲ属2種(蝶媒花のハマカンゾウと蛾媒花のキスゲ)の雑種集団における、花形態や開花時間に作用する淘汰圧について、3年目の調査を実施した。その結果、送粉昆虫の組成の年変動に応じて、どの形質にどの方向で淘汰が作用するかは、年変動することが明らかになった。 ●携帯型マルチチャンネル分光システムを購入し、2種の花の反射・透過波長特性の違いを定量的に測定した。また、芳香成分に関するガスクロマトグラフィによる分析を行ない、蛾媒花種のみが芳香成分を放出することを確認した。 ●F1個体を育成するとともに、親個体からDNAを抽出し、分子マーカーの開発に着手した。 ●2種間の人工交配にあたり、内的隔離機構の強化が生じている可能性を検討するために、キスゲ・ハマカンゾウの同所的な組合せと異所的な組合せの間で交配を行った。その結果、隔離の強化を支持する証拠は得られなかった。 ヒヨドリバナに関しては、有性型にジェミニウイルスを接種し、個体間でウイルス耐性に変異があるかどうかを検討した。今年度は、接種の実験条件を整備することに成功したが、接種した個体はすべて感染し、ウイルス耐性の表現型は確認できなかった。この結果は、ベクターであるコナジラミを用いずに、接木によって接種したためと思われる。
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Research Products
(1 results)
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[Publications] Ohashi, K., Yahara, T: "Visit larger displays but probe proportionally fewer flowers : counterintuitive behaviour of nectar-collecting bumble bees"Functional Ecology. 16・4. 492-503 (2002)