Research Abstract |
本研究では,燃焼反応領域をできるかぎり微細に計測可能な測定装置を開発し,その燃焼反応領域の微細構造を明らかにすることを試みる.その際に,微小領域からの発光や散乱光を,上記測定装置を用いて集光して局速度時系列で分光計測することにより,燃焼反応領域やより一般的な化学反応領域中微小領域での化学反応状態を明らかにすることを目的とし,具体的には以下の事項を達成した. 着火は燃焼の開始に不可欠な過程であるにもかかわらずそのメカニズムは十分に解明されていない.可燃性予混合気の着火は,火災や爆発などの災害はもちろんのこと,ガスタービンや往復式内燃機関においても重要な過程のひとつである.本研究では,着火現象のメカニズムの解明を目的として,条件設定が比較的容易なレーザ励起ブレイクダウンの基礎的な現象解明をめざした. まず,レーザ着火およびレーザ励起ブレイクダウンに関する従来の研究について概説し,本研究の目的を明確にした.次に,レーザ励起ブレイクダウンのメカニズムに関して,カセグレン光学系を応用した高空間分解能を有する集光光学系を用い,プラズマから発せられる自発光スペクトルの測定を行い,高い空間分解能で測定が行えることを確認した.また,レーザ光のプロファィルがブレイクダウン現象におよぼす影響について観察し,光源であるNd:YAGレーザの発振条件の変化によって,パルス光のプロファイルが変化すること,その結果として,ブレイクダウン現象にも変化が見られることを見いだした.また,レーザ励起ブレイクダウンにおよぼす集光光学系の収差の影響について検討し,実験で用いた集光光学系では球面収差の影響で集光特性が理想的な集光光学系に比べて悪くなり,特に焦点距離が短い場合,アクロマートレンズのような収差の影響を補正した集光光学系の使用により,ブレイクタウン特性が改善されることを見いだした.最後に,カセグレン光学系とストリークカメラを使用することにより,プラズマが形成されてから消滅するまでの同プラズマからの自発光スペクトルを時間連続測定し,形成されたプラズマの内部構造および広がり過程を明らかにした. 以上のように,本研究ではレーザ励起ブレイクダウンによる着火のメカニズムの解明を目的として,レーザ励起ブレイクダウンに及ぼすパラメータ依存性について解析を行い,数値シミュレーションと実験結果との対比による検証を行こない,ブレイクダウンに伴い形成されるプラズマについて調べ,いままで観測されていなかったプラズマ内部の現象の時間経過を明らかにした.
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