2002 Fiscal Year Annual Research Report
ホウレンソウ根腐れ病菌の生活環展開と情報伝達系に関わる分子機構の解明
Project/Area Number |
14206013
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
田原 哲士 北海道大学, 大学院・農学研究科, 教授 (50001475)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
福士 幸治 北海道大学, 大学院・農学研究科, 講師 (60218906)
橋床 泰之 北海道大学, 大学院・農学研究科, 助教授 (40281795)
吉原 照彦 北海道大学, 大学院・農学研究科, 教授 (90002071)
崎浜 靖子 北海道大学, 大学院・農学研究科, 助手 (10344491)
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Keywords | 植物病原菌 / 卵菌類 / 遊走子 / 宿主特異的誘引物質 / 走化性 / ホウレンソウ / レセプター / シグナルトランスダクション |
Research Abstract |
植物病原性卵菌のひとつホウレンソウ根腐れ病菌(Aphaomyces cochlioides)は、宿主特異的な化学物質によって、卵胞子の発芽、遊走子の走化性による宿主植物へのアクセス、被嚢化、出芽して宿主への侵入・増殖などが支配されている。生活環展開に関わる化学的要因の解明と、病原菌と宿主あるいは非宿主植物との情報交換、遊走子のシグナル物質受容から挙動や形態の変化に至る情報伝達機構研究を推進した。 1)卵菌の遊走子を用いた生物検定により、宿主ならびに非宿主植物成分中の生理活性物質を探索する。 2)宿主特異的遊走子誘引物質であるcochliophilin Aに対する受容体を特定し、その実態を究明する。 3)遊走子の誘引・被嚢化・被嚢胞子の発芽を触発過程に機能している細胞内情報伝達の分子機構を解明する。 これらの研究項目に関する知見の拡大や研究ツールとなる化学物質として、nicotinamideやcondenced tanninを見い出した。これらは、遊走子の遊泳停止活性や細胞膜溶解活性を示し、遊走子の被嚢化や細胞死を起こした。これら遊走子の挙動や形態変化を誘導する植物成分は、今後の研究にも重要で、有効に使うことにより確かな研究展開が図れるものと期待される。 ホウレンソウ根腐れ病菌遊走子は(A)均質な遊走子を容易に調製できる。(B)化学物質に対して、極めて高感度で応答する。(C)生活環展開のシグナル物質を含め多様な化学物質に形態変化や遊泳挙動による応答を示す。(D)形態変化は電子顕微鏡で、挙動変化は光学顕微鏡で観察でき、可視化に適している。(E)遊走子の遊出や化学物質に対する応答は、数秒から数分、被嚢化から発芽までは数分から数10分で観察される、など、細胞内情報伝達の分子機構研究のためにも、優れた研究材料となることが確信された。その応用として、まだ予備的段階ではあるが、宿主特異的誘引物質のアゴニストとして機能する受容体修飾型のプローブを設計し、遊走子の膜蛋白質画分との相互作用を検出する実験を進めている。
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Research Products
(5 results)
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[Publications] Md.T.Islam, T.Ito, S.Tahara: "Attachment and differentiation of zoospores of the phytopathogenic fungus Aphanomyces cochlioides"J. Gen. Plant Pathol.. 68. 111-117 (2002)
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[Publications] T.Shimai, Md.T.Islam, Y.Fukuchi, Y.Hashidoko, R.Yokosawa, S.Tahara: "Nicotinamide and structurally related compounds show halting activity against zoospores of the phytopathogenic fungus Aphanomyces cochlioides"Z. Naturforsch. 57C. 323-331 (2002)
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[Publications] R.Begum, Y.Hashidoko, Md.I.Islam, Y.Ogawa, S.Tanaka: "Zoosporicidal activity of anacardic acids against Aphanomyces cochlioides"Z. Naturforsch. 57C. 874-882 (2002)
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[Publications] Md.T.Islam, T.Ito, M.Sakasai, S.Tahara: "Zoosporicidal activity of polyflavonoid tannin identified in Lannea coromandelica stem bark against phytopathogenic oomycete Aphanomyces cochlioides"J. Agr. Food Chem.. 50. 6697-6703 (2002)
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[Publications] Md.T.Islam, T.Ito, S.Tahara: "Hostspecific plant signal and G-protein activator mastoparan trigger differentiation of zoospores of the phytopathogenic oomycete Aphanomyces cochlioides"Plant and Soil. (in press). (2003)