2003 Fiscal Year Annual Research Report
Ewing肉腫の発がん機構の解明と分子標的治療の開発
Project/Area Number |
14207057
|
Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
岩本 幸英 九州大学, 大学院・医学研究院, 教授 (00213322)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
田仲 和宏 九州大学, 大学病院, 助手 (10274458)
小田 義直 九州大学, 大学院・医学研究院, 講師 (70291515)
|
Keywords | Ewing肉腫 / EWS-Flil / 融合遺伝子 / 細胞周期 / アポトーシス / 分子標的 |
Research Abstract |
Ewing肉腫(ES)は悪性骨軟部腫瘍の中で最も生命予後不良な腫瘍の一つである。ES症例の90%以上で染色体転座t(11:22)(q24;q12)がみられ、その結果、異常な融合遺伝子EWS-Fli1が生じる。この融合遺伝子産物は強力な転写因子として働き、ESの発がん原因と考えられている。これまでに我々は、EWS-Fli1融合遺伝子はESの発がんのみならず、その生物学的性質をも規定している可能性があることを示してきた。さらに我々は、EWS-Fli1が癌抑制遺伝子Rbに関係した細胞周期制御因子(p27,p21,cyclin E)を標的とし、Rb経路を阻害することがES発がんに深く関与していることを明らかにした。しかし、ESではゲノムの守護神とも称されるp53が正常であることが多く、Rb経路の異常だけでESの発がんを説明することはできない。本研究の目的は、転写因子EWS-Fli1によってp53の機能がどうのように抑制されているかを解明し、ES発がん機構の全容を明らかにすること、さらに、そこに関わるEWS-Fli1の標的遺伝子を明らかにし、そのシグナル伝達経路を阻害することでES細胞の増殖等の悪性形質を有効に抑制できるか検討を加えること、である。 昨年度には、各種ES細胞株を用いてp53の変異状態を調べ、p53正常ES細胞においてもp53の機能抑制が生じており、その抑制がp53過剰発現により克服されること、EWS-Fli1とp53は免疫沈降によって共沈し、両者が結合していること、を明らかとした。 これらの結果をふまえ、本年度においては以下の実験を行った。 1)EWS-Fli1とp53の相互作用の解析 EWS-Fli1とp53の結合の詳細を解析するため、EWS-Fli1とp53のGST融合蛋白質のdeletion mutantを作成し、EWS-Fli1とp53の結合について、実際にどのドメインで結合しているかを明らかにした。実際に、そのドメインを欠失しp53結合能を欠いたEWS-Fli1変異体をEs細胞株に導入すると、Es細胞の増殖が抑制可能であった。 2)EWS-Fli1によるp53の機能抑制の解析 p53の下流に存在し、p53の機能であるアポトーシス誘導、DNA修復などに関わるエフェクター因子がすでに同定、報告されている。そこで、p53正常の線維芽細胞にEWS-Fli1発現ベクターを導入し、EwS-Fli1によってp53及ぴp53エフェクター分子の発現がどのように変化するかを調べた。その結果、特にアポトーシス関連遺伝子の発現変化は認められず、EWS-Fli1によるp53機能抑制は単純なp53エフェクター分子遺伝子発現抑制によるものでは無いことが判明した。今後さらに解析を進め、EWS-Fli1による発がん機能の全貌を明らかにする予定である。
|
-
[Publications] Ide Y, et al.: "Characterization of the genomic structure and expression of the mouse Apex2 gene"Genomic. 81. 47-57 (2003)
-
[Publications] Oda Y, et al.: "Nuclear expression of Y box-binding protein-1 correlates with P-glycoprotein and topoisomerase II-alpha expression, and poor prognosis in synovial sarcoma"J.Pathol.. 199. 251-258 (2003)
-
[Publications] Saito T, et al.: "Low-grade fibrosarcoma of the proximal humerus. A case report with a review of literatures"Pothol.Int.. 53. 115-120 (2003)
-
[Publications] Nakatani F, et al.: "Identification of p21(WA1/CIP1) as a direct target of EWS-Flil oncogenic fusion protein"J.Biol.Chem.. 278(17). 15105-15115 (2003)
-
[Publications] Saito T, et al.: "Possible association between Tumor-suppressor gene mutations and hMSH2/hMLH1 inactivation in alveolar soft part sarcoma"Human Pathology. 34(9). 841-849 (2003)
-
[Publications] Oda Y, et al.: "Altered expression of cell cycle regulators in myxofibrosarcoma, with special emphasis on their prognostic implications"Human Pathology. 34(10). 1035-1042 (2003)
-
[Publications] Kwaguchi K: "Mechanisms of inactivation of the P16 INK4a gene in leiomyosarcoma of soft tissue : decreased p16 expression correlates with promoter methylation and poor prognosis"J.Pathology. 201. 487-495 (2003)
-
[Publications] Naka T, et al.: "Skull base and nonskull base chordomas"Cancer. 98(9). 1935-1941 (2003)
-
[Publications] Matsunobu T, et al.: "The prognostic and therapeutic relevance of p27kipl in Ewing's family tumors"Clin.Cancer Res.. (in press). (2003)
-
[Publications] Saito T: "PTEN/MMCA1 gene mutations a rare event in soft tissue sarcomas without specific balanced translocations"Int.J.Cancer. (in press). (2003)
-
[Publications] 岩本幸英(分担執筆): "先端医療シリーズ22 整形外科"先端医療技術研究所. 431 (2003)