2002 Fiscal Year Annual Research Report
遺伝性ライソゾーム病の脳障害に対する新しい分子治療薬の開発
Project/Area Number |
14207106
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Research Institution | International University of Health and Welfare |
Principal Investigator |
鈴木 義之 国際医療福祉大学, 保健学部, 教授 (90010389)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
難波 栄二 鳥取大学, 遺伝子実験施設, 助教授 (40237631)
大野 耕策 鳥取大学, 医学部, 教授 (70112109)
黒澤 美枝子 国際医療福祉大学, 保健学部, 教授 (30178131)
松崎 祐二 生化学工業株式会社, 中央研究所, 研究員
松田 潤一郎 国立感染症研究所, 獣医科学部, 室長 (60181731)
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Keywords | ケミカルシャペロン療法 / β-ガラクトシダーゼ / GM1-ガングリオシドーシス / 競合的阻害剤 / 遺伝子組換えモデルマウス / N-オクチル-4-エピ-β-バリエナミン / ライソゾーム病 |
Research Abstract |
現在治療法のない遺伝性ライソゾーム病の脳障害に対する新しい治療法、ケミカルシャペロン療法を開発する試みを行った。これは細胞内で不安定な変異蛋白質を、基質類似の構造を持つ化合物の存在により安定化し、活性を発現させるという原理に基づく新しいアプローチ法である。本研究ではβ-ガラクトシダーゼ欠損を示す遺伝性疾患群(β-ガラクトシドーシス)の中で強い脳障害を伴う病型、G_<M1>-ガングリオシドーシスに対する治療実験を行った。新しく合成した化合物、N-オクチル-4-エピ-β-バリエナミン(NOEV)がβ-ガラクトシダーゼの強い阻害剤であることがわかり、患者由来の線維芽細胞培養液に添加したところ、変異特異的な酵素の活性化が見られた。特に若年型症例の変異酵素は著しい反応を示した。その変異のひとつ、R201C変異をもつcDNAを酵素欠損ノックアウトマウスにトランスジーンとして導入し、ヒト若年型症例に対応するモデルマウスを作成した。この動物は酵素の完全欠損マウスと異なり、生後6ヶ月過ぎより発症し、その後1年ぐらいの経過で死にいたる進行性の経過をとる。NOEV水溶液をアドリブに経口投与したところ、1週間で中枢神経系を含むあらゆる組織のβ-ガラクトシダーゼ活性が著しく上昇した。短期投与のため、蓄積脂質の大きな変化はなかったが、組織化学的には蓄積細胞の数の減少を観察した。この結果から、NOEVは経口投与により、血流から血液脳関門を通過し、脳組織内で神経細胞の変異酵素を安定化し、細胞内代謝動態を矯正することができるという結論を得た。今後長期投与の効果と毒性を検討する予定である。NOEVの構造と阻害・安定化作用それぞれについては特許出願中である。またこの成果は論文として投稿中である。
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Research Products
(4 results)
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[Publications] Takaura N, Yagi T, Maeda M, Nanba E, Oshima A, Suzuki Y, Yamano T, Tanaka A: "Attenuation of ganglioside G_<M1> accumulation in the brain of G_<M1> gangliosidosis mice by neonatal intravenous gene transfer"Gene Therapy. (In press). (2003)
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[Publications] 鈴木義之: "β-ガラクトシドーシス:新しい分子治療法の開発"神経研究の進歩. 46. 851-858 (2002)
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[Publications] Ogawa S, Matsunaga YK, Suzuki Y: "Chemical modification of the β-glucocerebrosidase inhibitor N-octyl-β-valienamine : Synthesis and biological evaluation of 4-epimeric and 4-O-(β-D-galactopyranosyl)derivatives"Bioorganic and Medicinal Chemistry. 10. 1967-1972 (2002)
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[Publications] Suzuki Y, Oshima A, Nanba E: "Scriver CR, Beaudet AL, Sly WS, Valle D, Childs B, Vogelstein B(eds):The Metabolic and Molecular Bases of Inherited Disease, 8th ed, Internet Version"β-Galactosidase deficiency(β-galactosidosis):G_<M1>-Gangliosidosis and Morquio B disease. 8700 (2002)