2004 Fiscal Year Annual Research Report
硝酸態窒素を蓄積するイオウ酸化細菌の動態解析と数理モデル化による環境影響評価
Project/Area Number |
14208065
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Research Institution | National Institute of Advanced Industrial Science and Technology |
Principal Investigator |
左山 幹雄 独立行政法人産業技術総合研究所, 環境管理技術研究部門, 主任研究員 (20344145)
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Keywords | 硝酸態窒素 / イオウ酸化細菌 / 堆積物 / 溶出 / 沿岸生態系 / 富栄養化 / 窒素循環 / 自然浄化機能 |
Research Abstract |
平成16年度は、細胞内に硝酸態窒素を高濃度に蓄積するイオウ酸化細菌(NA-SOB)が、沿岸海域の富栄養化の進行に与えている影響を定量的に評価するために、以下の研究を行った。 1.NA-SOBの生息状況の時空間的動態とそれを調節している環境要因の解析 これまでに開発した手法を用いて、東京湾湾央部堆積物表層における、NA-SOBのbiomass(filament length, Cell width, cell length)の鉛直プロファイル、及び水-堆積物界面近傍における酸素・硫化物・pHの鉛直濃度プロファイルの季節変化を測定した。また、デンマーク オルボー大学のJeppe Lund Nielsen博士を日本に招聘し、東京湾のNA-SOBのclone libraryの作成とFISHによるpopulation解析を行った。そして、biomass測定時にcell widthとcell lengthを同時に測定し、populationごとのbiomassの時空間的動態を明らかにした。現場調査では同時に、未撹乱堆積物コアを層別に分取し、凍結前後のNO_<3^->-Nの濃度変化から、NA-SOBの細胞内に蓄積されているNO_<3^->-Nのpool sizeの鉛直プロファイルを測定した。また、層別に分取した堆積物試料からNA-SOBのsingle filamentを単離し、NA-SOBの細胞内に蓄積されているNO_<3^->-Nのpool sizeをfilament単位で測定する手法を確立した。これらの調査結果から、NA-SOBの生息状況の時空間的動態を解明し、それを調節している環境要因の解析を行った。 2.NA-SOBの窒素代謝メカニズムの解明と沿岸生態系の窒素循環に与える影響の把握 これまでに開発した手法を用いて、東京湾湾央部において、酸素・硫化物・溶存態窒素の水-堆積物間のフラックスの季節変化を測定した。そして、フラックスの測定結果を、NA-SOBの生息状況の時空間的動態の調査結果と対比することにより、NA-SOBが沿岸生態系の窒素循環に与えている影響を評価した。また、ドイツ ハノーバー大学のHeide Schulz博士を日本に招聘し、東京湾のNA-SOBを単離・培養方法についての検討を行った。 3.NA-SOBを組み込んだ沿岸海域堆積物表層における窒素循環過程の数理モデル化 平成15年度までに得られている培養実験系によるNA-SOBの窒素代謝メカニズムについての実験的解析結果をもとに、NA-SOBを組み込んだ沿岸海域堆積物表層における窒素循環過程の数理生態系モデルの開発を始めた。モデル開発を始めるための綿密な打ち合わせを行うために、米国ヴァージニア大学のPeter Berg博士及びデンマーク国立環境研究所のHenrik Fossing博士を日本に招聘した。
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