2004 Fiscal Year Annual Research Report
環境汚染物質によるポルフィリン症の解析:ヘム合成と蛋白質合成の協奏とテンポ
Project/Area Number |
14208066
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
清水 透 東北大学, 多元物質科学研究所, 教授 (40118956)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
黒河 博文 東北大学, 多元物質科学研究所, 助手 (80359546)
五十嵐 城太郎 東北大学, 多元物質科学研究所, 助手 (80375162)
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Keywords | 分子スイッチ / ヘム / センサー / 蛋白翻訳・合成 / 部位特異的変異 / NO / 軸配位子 / 赤血球 |
Research Abstract |
赤血球においては、ヘモグロビンが酸素分子の貯蔵に重要な働きをする。そこにおいては、ヘムとグロビンのモル比が常に1:1でなければならない。その比が、>1、又は<1にずれると重症な赤血球の病気になる。赤血球の前期発達段階である網状赤血球において、ヘム結合型ヘモグロビンのグロビン蛋白質の翻訳(合成)の開始と停止はヘムの濃度をセンスして行われる。ヘムをセンスして、蛋白質の翻訳(合成)する酵素は真核生物イニシエーションファクターelF2αキナーゼ(HRI)によって行われる。平成15年度において、HRIがヘムを介在してNOにより活性が上昇する機構の一部を解明した。平成16年度においては、ヘムが結合する軸配位子の同定を試みた。分光学的結果より、HisとCysが軸配位子であると推定されたので、これらのアミノ酸残基の部位特異的変異を行った。Tyr38,His75,His78,His80,Cys95,His120,K196,C208,C385,C464,C491などのアミノ酸を他のアミノ酸へ変異させた。いずれも、N-末端に(His)6-Tagが組み込まれているものであった。いずれの変異体も吸収スペクトルでも共鳴ラマンスペクトルでも野生型に比較して顕著な変化が認められなかった。又、ヘムの結合速度、ヘムの解離速度なども一部測定したが、野生型に比較して著しい差は認められなかった。(His)6-Tagの影響もあるのではないかと考えて、(His)6-Tagが除かれた変異体も合成して各種分光学的手法で調べたが、野生型と比べて著しい差がこの場合も認められなかった。この理由として、センサー酵素特有の蛋白構造の柔軟性プラスティシティーが考えられる。つまり、例え元来のヘムの軸配位子を他のアミノ酸に変異しても、近傍に存在する別のHis,Cysが配位する可能性も存在する。現在、構造のみならず、機能という意味でのヘムの役割についてさらに研究中である。さらに、NOがHRIを活性化するという結果から、NOが生体内でどのような機構で合成されるかという意味でも、NO合成酵素の活性発現の機構についても研究した。
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Research Products
(4 results)