2002 Fiscal Year Annual Research Report
動物ミトコンドリアの特殊性を活用した遺伝情報翻訳システムの基盤原理の解明
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14208077
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
渡辺 公綱 東京大学, 大学院・新領域創成科学研究科, 教授 (00134502)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
大槻 高史 東京大学, 大学院・新領域創成科学研究科, 助手 (80321735)
鈴木 勉 東京大学, 大学院・新領域創成科学研究科, 講師 (20292782)
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Keywords | ミトコンドリア / 翻訳装置 / 最小必須構造 / tRNA / リボソーム / 23SrRNA / 16rRNA / 保存配列 |
Research Abstract |
本研究は翻訳過程における未解決の根本問題を、動物ミトコンドリア(mt)の翻訳装置の特殊性を活用することにより解明しようとするものであり、以下の3つのテーマが設定されている。(1)tRNAの最小必須構造は何か。(2)リボソームの最小必須構造は何か。(3)翻訳系のエネルギー源である加水分解反応のtriggerは何か。 本年度は以下の成果を得た。 (1)tRNAの最小必須構造-mt・tRNAもmt・EF-Tu存在下では大腸菌リボソーム上で翻訳反応を行えることを、3種類の構造の異なるtRNA(正常なものに近いがT-Dループの会合のないPhe-tRNA、この会合はあるが、アンチコドンステムが1塩基対長いSer-tRNA^<Ser>UGA、Dアームを欠いたSe-tRNA^<Ser>GCU)を用いて確認した。さらにこのことを大腸菌内でのin vivoの実験で確認するための予備実験を行なった。 (2)リボソームRNAの短縮化-大腸菌リボソームと比較してmt・リボソームはRNA:蛋白質の量比が逆転している。Mt・リボソームではrRNAが大腸菌の約半分に減少している代わりに、蛋白質が倍増している。我々はmt・リボソームのプロテオーム解析により、大腸菌と比べてrRNAが欠けている領域に結合する蛋白質は肥大化しているという傾向を見出した。(鈴木ら、J.Biol.Chem.2001,2報)。このことはRNAが担っていた機能と構造をタンパク質が代替した結果ではないかと考えた。このことを実験的に検証するため、全リボソームRNAオペロン欠損大腸菌株を用いて、プラスミド上のリボソームRNA遺伝子上で、機能に関係しない周辺部のrRNAがどこまで削除可能かを調べたところ、23S rRNAで18箇所、16S rRNAで12箇所の欠失可能部位を同定した。またこれらを組み合わせたところ、6箇所の同時欠失に成功し、最大で100塩基以上の短縮に成功した。今後はさらに欠損部位を組み合わせて大腸菌rRNAの最少必須構造を探ると共に、致死性の欠損株に肥大化したミトコンドリアリボソームタンパク質を導入し、rRNAの変異をタンパク質が相補できるかの実験を計画している。 (3)リボソームRNAの保存配列の重要性の検証-異常に短縮化されたmt・tRNA中に保存されている配列はリボソームの普遍的な役割に特に重要であることが示唆されている。上の変異株に、特定の領域をランダマイズしたrRNA遺伝子をもつプラスミドを導入したところ、P、A両部位でtRNAのCCA末端を固定する23SrRNA中のPループのG2251とG2252、AループのG2553、ペプチド合成反応の触媒中心に位置すると考えられているA2451、アンチSD配列などは強固に保存された塩基として検出されたので、これらの塩基の重要性が確認された。
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Research Products
(7 results)
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[Publications] T.Kaneko, T.Suzuki, K.Watanabe et al.: "Wobble modification differences and subcellular localization of tRNAs in Leishmania tarentolal"EMBO.J.. 22・3. 657-667 (2003)
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[Publications] T.Ohtsuki, K.Watanabe et al.: "Characterization of the interaction between the nucleotide exchange factor from nematode mf"Nucl.Acids Res.. 30・24. 1-8 (2002)
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[Publications] T.Suzuki, K.Watanabe et al.: "Taurine as a constituent of mitochondrial tRNAs : new insights into the functions of taurine and human mitochondrial diseases"EMBO.J.. 21・23. 6581-6589 (2002)
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[Publications] T.Yasukawa, T.Suzuki, K.Watanabe, et al.: "Wobble modification defect suppresses translational activity of tRNA from MERRF and MELAS"Mitochondrian. 2. 129-141 (2002)
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[Publications] T.Ohtsuki, K Watanabe et al.: "A unique serine-specific elongation factor Tu found in nematode mitochondria"Nature Str.Biol.. 9・9. 669-672 (2002)
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[Publications] T.Ohtsuki, K.Watanabe, et al.: "The minimal tRNA : unique structure of Ascaris suum mitochondrial tRNA SerUCU"FEBS Letters. 514. 37-43 (2002)
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[Publications] 渡辺 公綱, 姫野 俵太: "生命化学II-遺伝子の働きとその応用"丸善. 255 (2003)