2003 Fiscal Year Annual Research Report
化学物質の健康影響評価における非線形構造活性相関手法の研究
Project/Area Number |
14209022
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Research Institution | Chiba Institute of Technology |
Principal Investigator |
田辺 和俊 千葉工業大学, 社会システム科学部, 教授 (90344134)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
松本 高利 東北大学, 多元物質科学研究所, 助手 (50343041)
都築 誠二 独立行政法人産業技術総合研究所, 計算科学研究部門量子モデリンググループ, 主任研究員 (10357527)
長嶋 雲兵 独立行政法人産業技術総合研究所, グリッド研究センター, 総括研究員 (90164417)
鈴木 孝弘 東洋大学, 経済学部, 教授 (30192131)
中田 宗隆 東京農工大学, 大学院・生物システム応用科学研究科, 教授 (40143367)
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Keywords | 構造活性相関 / ニューラルネットワーク / 発ガン性予測 |
Research Abstract |
本研究の目的は多数の化学物質についてニューラルネットワークという非線形モデルを用い、化学構造の情報のみから構造活性相関手法により、様々な危険性(発ガン性、急性毒性、慢性毒性、変異原性、蓄積性など)の有無とその強度(毒性の致死量など)を、既存の予測システムの性能を越える高い精度で迅速に予測する手法を開発することである。昨年度は研究の初年度としてニューラルネットワークの有効性を検証するために、階層型ニューラルネットワークの入力層に化合物の構造記述子を、出力層には発ガン性の有無を入力して学習を行った結果、発ガン性を90%近い精度で予測できることを見出した。そこで本年度はニューラルネットワークの学習の最適条件、特に学習回数の最適条件を見つけるために我々独自の方法を開発した。すなわち、学習データであるNTPデータベースからの323物質のデータをtraining setとvalidation setに等分割し、前者のデータを用いて学習を行いながら、後者のデータに対する出力値と教師データとの誤差を観測した。その結果、学習を繰り返すことにより、training setに対する誤差は当然減少していったが、validation setに対する誤差は始めの内は減少するが、ある学習回数を超えると増加に転じ、極小値が存在することを見出した。この誤差が極小値になる学習回数は初期出発値にもよるが、学習回数1000〜2000回で極小値に達し、この程度の学習回数がニューラルネットワークの学習として最適であることを見出した。したがって昨年度の研究で行っていた数万回〜数十万回の学習はいわゆる過学習であり、誤差が逆に増大し、最適の正解率が得られてはいなかったことが判明した。ニューラルネットワークの学習についてはこの過学習(over-training)の問題があることは従来から指摘されていたが、その問題を具体的に解決する方法がこれまで提案されていなかった。これに対して我々の方法は過学習の問題を解決できる具体的な方法を提案できた点で高く評価できると思われる。今年度はこの学習回数の他に、記述子、中間層などについても検討し、ニューラルネットワークを用いて発ガン性の有無を予測する手法の最適条件を確定することができた。
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Research Products
(7 results)
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[Publications] K.Tanabe, N.Ohmori, S.Ono, T.Suzuki, T.Matsumoto, H.Uesaka: "Neural Network Prediction of Carconogenicity of Organic Compounds"Journal of Pharmacy and Pharmacology. 55. S19 (2003)
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[Publications] 田辺和俊, 松本高利, 小野修一郎: "構造活性相関(QSAR)による化学物質のリスク評価"千葉工業大学研究報告. 51(印刷中). (2004)
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[Publications] 松本高利, 長嶋雲兵, 田辺和俊, 小野修一郎: "計算化学による高性能リチウムイオン2次電池の負極炭素材料設計 -特異な炭素骨格構造モデルの探索-"Journal of Computer Chemistry, Japan. 2(2). 63-70 (2003)
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[Publications] 田辺和俊, 松本高利, 都築誠二: "計算化学による振動スペクトルの予測-塩素化メタン分子13種の気相における振動数と赤外強度の非経験的分子軌道計算-"Journal of Computer Chemistry, Japan. 3(3)(印刷中). (2004)
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[Publications] S.Tsuzuki, T.Uchimaru, M.Mikami, S.Urata: "Ab initio calculations of intermolecular interaction of CHF3 dimer : Origin of attraction and magnitude of CH/F interaction"Journal of Physical Chemistry. A,107. 7962-7968 (2003)
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[Publications] S.Tsuzuki, T.Uchimaru, M.Mikami: "Is the cation/pi interaction in alkaline-earth-metal dication/benzene complexes a covalent interaction?"Journal of Physical Chemistry. A,107. 10414-10418 (2003)
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[Publications] 田辺 和俊: "NEUROSIM/Lによるニューラルネットワーク入門"日刊工業新聞社. 100 (2003)