2004 Fiscal Year Annual Research Report
東南アジアにおけるセーフティ・ネットの比較研究-「老い」の問題を中心として
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14251005
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
河野 泰之 京都大学, 東南アジア研究所, 助教授 (80183804)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
松林 公蔵 京都大学, 東南アジア研究所, 教授 (70190494)
西渕 光昭 京都大学, 東南アジア研究所, 教授 (50189304)
阿部 茂行 同志社大学, 政策学部, 教授 (60140076)
白石 隆 京都大学, 東南アジア研究所, 教授 (40092241)
水野 廣祐 京都大学, 東南アジア研究所, 教授 (30283659)
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Keywords | 老い / 高齢者 / セーフティー・ネット / 医療 / アジア |
Research Abstract |
アジアでも、少子高齢化はかつての欧米諸国以上のスピードで進行している。2000年頃を境にアジアの全域で人口の高齢化が始まり、2050年には、日本についで、シンガポール、韓国、タイ、中国が高齢社会となり、その他のアジア諸国も高齢化社会をむかえることが予測されている。アジア各国も、きたるべき高齢社会にむけての医学的対応に迫られている。しかし、アジアでは欧米諸国がすでに克服し去った感染症がいまだに重大な課題として残されている。さらに、保健福祉にふりむけられる財政は豊かではない。アジアの人々はその地でうまれ、既存の医療システムのなかで疾病とむきあい、やがて老い、ある種の死生観をもって死んでゆく。本研究では、共通の高齢者総合機能評価を用いて、韓国、インドネシア、ベトナム、ミャンマー、タイ、ラオスにおける地域在住高齢者のべ2000名の健康実態を把握し、あわせて地域固有の高齢者ケアーシステムのありかたを調査した。その結果、ラオス、タイ高齢者では、他の周辺東南アジア諸地域に比して、糖尿病の有病率が有意に高く、これは近年の経済発展と一定の関連があることが示唆された。また、経済的要因は、アジア各国と本邦においても、高齢者の日常生活自立と有意の関連を示し、経済要因が高齢者の健康と密接な関連があることが明らかとなった。またアジアの高齢者に関する調査を通じて、高齢者のQuality of Life(QOL)には、身体的、心理的、経済的、社会的要因以外にも、spiritualな要因、とくに仏教やイスラム教などの宗教的要因が大きく関連し、虚弱高齢者のケアーには、地域共同体とそれを結ぶ宗教的ネットワークが大きな比重を占めていることが明らかとなった。アジアの今後の医療の動向が、欧米諸国がかつてたどった同じ道をめざすという保証はいまのところない。高齢者の保健とケアーに関するセイフティーネットには、地域性がきわめて重要でありさらなる観察を要する。その意味で人の、生・老・病・死は、その地域固有の生態系とその民族の歴史と価値観が規定する相対的な概念でもある。
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Research Products
(7 results)