2003 Fiscal Year Annual Research Report
事実・行為・規範をめぐる知識の実践的意義の研究 -「自然と人為」の対比についての哲学的再検討-
Project/Area Number |
14310002
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
松永 澄夫 東京大学, 大学院・人文社会系研究科, 教授 (30097282)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
榊原 哲也 東京大学, 大学院・人文社会系研究科, 助教授 (20205727)
高山 守 東京大学, 大学院・人文社会系研究科, 教授 (20121460)
天野 正幸 東京大学, 大学院・人文社会系研究科, 教授 (40107173)
伊藤 美惠子 東京大学, 大学院・人文社会系研究科, 助手 (60345238)
一ノ瀬 正樹 東京大学, 大学院・人文社会系研究科, 助教授 (20232407)
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Keywords | 事実 / 規範 / 行為 / 倫理 / 制度 / 自然 / 知識 / 正義 |
Research Abstract |
本研究は、知識や認識の実践的意義を解明し、その社会的、法的、制度的、倫理的なあり方を明らかにすることを研究目的とするものであり、またこれを通じて「自然と人為」という伝統的対比に関する哲学的再検討を行うことを意図するものである。具体的には以下のような成果を上げることができた。 松永は、分析という方法の特性を考察しつつ、諸々の技術の伝統性と他方での伝播可能性と普遍性という、二つの対比的事柄の裏側にあるものを明らかにした。 天野は、行為の規範としての「フュシス」(自然・自然の理)と「ノモス」(法律・社会的慣習)についてのプラトンの考え方を、『ゴルギアス』・『プロタゴラス』・『国家』・『ピレーボス』・『法律』を手懸りにして詳細に検討した。 高山は、ドイツ古典哲学、とりわけ、シェリングおよびヘーゲルをめぐって、「自然」がいかに把握されたかを探求した。人間を包摂する「自然」が、われわれの知および行為の最も根源的な規範となる、と考えうるからである。 一ノ瀬は、現代の哲学的な「意思決定理論」の主流と目される「ベイズ主義」について探るため、今年度は「ベイズ主義認識論」の核心である「ベイズ条件づけ」を主題的に取り上げ、それへの代表的批判である「古い証拠の問題」を検討し、英語論文として発表した。 榊原は、フッサール現象学における「自然と精神」の問題に取り組み、主として『イデーンII』に基づいて、「精神が自然を構成する」という基本的構図の背後に「精神の基底としての生ける自然」の思想を読み取りうることを明らかにした。 伊藤は、カント『純粋理性批判』「超越論的弁証論」の議論に基づいて、自然における対象を個的対象として捉える認識行為の仕組みを解明し、研究論文として発表した。
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Research Products
(7 results)
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[Publications] 天野正幸: "プラトン・アリストテレスの哲学を理解することは可能か"古代ギリシャ・ローマ研究の方法. 25-44 (2003)
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[Publications] Mamoru Takayama: "Der Begriff des Guten im modernen japanischen Denken"Zukuinftiges Menschsein : Ethik zwischen Ost und West. 139-169 (2003)
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[Publications] Masaki Ichinose: "Remarks on the Problem of Old Evidence in Bayesian Epistemology"Philosophical Studies. (in print). (2004)
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[Publications] 榊原哲也: "自然と精神--フッサールにおける自然の現象学--"池田善昭編「自然概念の哲学的変遷」. 249-268 (2003)
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[Publications] 榊原哲也: "「イデーンII」への一視点--遺された未刊草稿からのアプローチ"現象学年報. 第19号. 27-37 (2003)
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[Publications] 伊藤美恵子: "カントにおける認識の汎通的規定原則"論集. (印刷中). (2004)
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[Publications] 松永澄夫: "食を料理する --哲学的考察"東信堂. 288 (2003)