2004 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
14310008
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Research Institution | IWATE UNIVERSITY |
Principal Investigator |
砂山 稔 岩手大学, 人文社会科学部, 教授 (00091702)
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Keywords | 西王母 / 楊貴妃 / 魏夫人 / 茅山派 / 重玄派 / 杜甫 / 本際経 / 太一 |
Research Abstract |
16年度は杜甫の詩文を読み、杜甫と道教との関係を考察し、「太清・太一と桃源・王母-杜甫と道教に関する俯瞰-」を執筆した。杜甫の詩は、「詩史」、即ち詩による歴史と言われるが、そこに道教のことが多く出てくるとすると、それは取りも直さず、唐代社会に道教が広く浸透していた現れと見ることが出来よう。論文では詩だけではなく、散文も考察の対象とした。中心は「太清宮」を中心とする玄宗時代の老子信仰に関わる問題であり、「太清宮」に関する杜甫の賦の中に唐代に流行した重玄派道教の経典である『本際経』の影響のあることなどを指摘した。また、「太一」に関する信仰、「太一救苦天尊」信仰に関する問題や唐代に仙境とされた桃源郷の問題も同時に取り上げた。 女性観との関わりでは、杜甫に、茅山派道教に連なる女仙「魏夫人」に関する言及もあることが従来から指摘されている。また、杜甫の詩文に良く登場する「王母」、即ち「西王母」は言うまでもなく、道教の女仙の代表的存在である。また、同時代の女性として関心を持たざるを得なかった楊貴妃は一時、女道士となったので楊太真とも言われる。楊貴妃の艶やかさは、実は当時の道教の華やさと不可分のものと見ることが出来、道教が女性を尊重したことが楊貴妃の美貌の一世風靡と深く関わるのである。ところで、先の「太清宮」に関する杜甫の賦の中では、『本際経』の影響を指摘できると同時に、そのことを元にして、杜甫が玄宗皇帝を道教の最高神である元始天尊に、楊貴妃を西王母に見立て、カップルとして歌い上げていると指摘できる部分がある。こうした考察も重要なものであろう。 16年度が最終年度となるので、『〓城集仙録』をはじめとする杜光庭の著作からの摘録ノートを報告書の中心とする予定である。
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