Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
浦 啓之 関西学院大学, 文学部, 助教授 (40283816)
岸本 秀樹 神戸大学, 文学部, 助教授 (10234220)
杉岡 洋子 慶應義塾大学, 経済学部, 教授 (00187650)
由本 陽子 大阪大学, 言語文化部, 助教授 (90183988)
小林 英樹 群馬大学, 教育学部, 助教授 (60312865)
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Research Abstract |
語彙の意味と統語的用法を包括する辞書理論の構築をめざし,当初の研究計画において,1.語彙の辞書情報の画定,2.語彙的意味と語用論的意味の区別,3.語彙の生成力と多義性のメカニズム,4.語彙構造と統語構造の連続性,5,語彙情報と統語構造の関係という5点を解明することを目標に掲げた。1に関しては,語彙概念構造そのものを精緻化すると共に,語彙概念構造とクオリア構造を融合させることによって動作目的や前提を辞書に取り込む方法などを提案した。2に関して,これまで語用論的とされてきた種類の意味情報のうち構文の成否に直接関与する情報はクオリア構造に取り込むべきであることなどを示した。3に関して,動詞がその目的語となる名詞のクオリア構造の情報を取り込むことによつて多義性が生まれることや,接辞や複合要素の機能が生産性の違いを左右することなどを解明した。4に関して,ある種の存在文と所有文が軽動詞構文と同じ性質を有することを明らかにし,語彙構造と統語構造をつなぐメカニズムとして意味編入という操作を提案した。また,「ある/いる」について,存在か所有かという意味の違いが自動詞か他動詞かという統語的な他動性の違いに反映されることを明6かにした。5に関して,構文交替,能格性・非対格性,統語的複合動詞の形成,統語的接辞化などの現象において主動詞の意味情報が重要な役割を果たすこと,従来捉えどころがないとして軽視されてきた「ぐずぐずする」のような擬態語動詞の性質が,擬態語そのものの意味構造を明らかにすることによつて,語彙概念構造の理論で適切に処理できること,従来看過されてきた状態性を持つ受身文や再帰構文の派生が出来事項の抑制によつて説明できることなど,統語的複合動詞と語彙的複合動詞の派生部門の違いが種々の意味的・統語的性質の違いに反映されることなどを明らかにした。
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