2003 Fiscal Year Annual Research Report
文化のクレオールと法の構造化--<比較法形成論>の探究とその深化--
Project/Area Number |
14320001
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
会澤 恒 北海道大学, 大学院・法学研究科, 助教授 (70322782)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
鈴木 賢 北海道大学, 大学院・法学研究科, 教授 (80226505)
尾崎 一郎 北海道大学, 大学院・法学研究科, 助教授 (00233510)
長谷川 晃 北海道大学, 大学院・法学研究科, 教授 (90164813)
桑原 朝子 北海道大学, 大学院・法学研究科, 助教授 (10292814)
田口 正樹 北海道大学, 大学院・法学研究科, 教授 (20206931)
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Keywords | クレオール / 法の構造化 / 権力 / 帝国 / 法治社会 / フェーデ / 信託 / 文人貴族 |
Research Abstract |
本年度は研究の第2ステージとして、文化のクレオールと法の構造化の過程の一般的パタンを立体的に分析した。価値的次元に関しては、法の概念と内生的な公共的価値との関わりについて探究した。法は正義と社会的問題認知との関数的において構造化され、その関係は信頼のもとで形成される「等しい自由」の規範伝統によると分析した。社会的次元に関しては、法のクレオール化の頽落態である普遍的権力のグローバルな浸透の様相を検討した。特に「帝国」への抵抗が自閉的な自己称揚に陥る過程を検討し、それは行為者や集団の相互接触、ネットワーキングと「普遍的」言説を介して成り立つ権力の帰結であることを示した。歴史・制度的次元においては、まずアジアに関して、東アジア法系の成立可能性について考察し、最近の中国の法治社会の形成に関して検討を加えた。加えて中国の法曹制度の変化についても調査し、さらに台湾の法曹制度のあり方などと比較して、東アジア法の多様性を捉えた。またヨーロッパに関しては、中世後期・近世ドイツにおけるフェーデを考察し、「フェーデの法」の根幹はフェーデの宣告にあること、その基礎には名誉という社会的評価があることが確認された。またフェーデの見方が15世紀後半以後、国制的=文化的変動に伴って変容することを分析した。さらにアメリカに関しては、引き続き9・11テロ後の米国の人権状況について分析した。その過程で、先住民の伝統的知識の保護措置が信託的枠組を応用したものとして説明できることを発見し、英米法特有の信託概念の応用による現代経済と先住民伝統的知識との共存を図る試みを検討した。そして日本に関しては、中国からの律令制の継受に尽力した平安前期の文人貴族による新体制構築の試みと、その挫折について考察した。特に菅原道真がメリトクラシーを活かす新しい貴族制を構想するものの、実際は血統重視の閉鎖的体制が成立したことを明らかにした。
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Research Products
(15 results)
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[Publications] Hasegawa, Ko: "The Structuration of Law and Its Working in the Japanese Legal System"Jacque Vanderlinden, ed. : The Strucutre of Legal Systems, (Emile Bruyant). (forthcoming). (2004)
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[Publications] 長谷川 晃: "Human Well-being and Public Provision"北大法学論集. 54巻6号. 404-432 (2004)
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[Publications] 長谷川 晃: "《コメント》「憲法と民法」と法概念の問題"法律時報. 940号. 78-81 (2004)
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[Publications] 尾崎一郎: "マルチチュードの(不)可能性"『<帝国>を読む(仮題)』(以文社). (発表予定). (2004)
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[Publications] 尾崎 一郎: "マンション建築紛争と「コミュニティ」"地方自治職員研修. 36巻11号. 29-31 (2003)
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[Publications] 鈴木 賢: "台湾"指宿信・米丸恒治『インターネット 法情報ガイド』(日本評論社). (発表予定). (2004)
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[Publications] 鈴木 賢: "日本的現代中国法研究"環球法学評論. 2003年冬季号(発表予定). (2004)
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[Publications] 鈴木 賢: "現代中国法にとっての近代法経験"社会体制と法. 4号. 15-27 (2003)
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[Publications] 鈴木 賢: "台湾の法曹制度"広渡清吾【編】『法曹の比較法社会学』(東京大学出版会). 221-256 (2003)
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[Publications] 鈴木 賢: "中国の法曹制度"広渡清吾【編】法曹の比較法社会学(東京大学出版会). 341-384 (2003)
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[Publications] 鈴木 賢: "〔中国語〕試論"東亜法系"成立的可能性"徐顕明・劉瀚【主編】法治社会 形成歟発展(下)(山東人民出版社). 314-325 (2003)
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[Publications] 田口正樹: "(書評)三佐川亮宏「"叙任権闘争"とregnum Teutonicum-"ドイツ"概念の政治的・歴史的地平-(上)(下)」"法制史研究. 53号(発表予定). (2004)
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[Publications] 田口正樹: "〔翻訳〕ペーター・モーラフ著『ヨーロッパ中世研究におけるモヌメンタ・ゲルマニアエ・ヒストリカの役割-過去と現在』"東京大学史料編纂所【編】歴史学と史料研究(山川出版社). 21-48 (2003)
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[Publications] 桑原朝子: "書評:藤原克己著『菅原道真と平安朝漢文学』"法制史研究. 52号. 191-196 (2003)
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[Publications] 桑原 朝子: "古代日本の文学と「法」-平安前期文人貴族の意識構造-"東京大学出版会(発表予定). (2004)