2005 Fiscal Year Annual Research Report
資本の自由移動を促進する法制の発展と実経済社会の要請の符合に関する法政策学的研究
Project/Area Number |
14320006
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Research Institution | Yokohama National University |
Principal Investigator |
川端 康之 横浜国立大学, 大学院・国際社会科学研究科, 教授 (70224839)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
庄司 克宏 慶応義塾大学, 大学院・法務研究科, 教授 (60235710)
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Keywords | OECDモデル租税条約 / 源泉徴収税 / 無差別条項 / 貯蓄 / 欧州憲法条約 / 警察・掲示司法協力 / ユーロ・グループ / 欧州逮捕状 |
Research Abstract |
本年は、拡大欧州後の欧州委員会の政策動向と欧州憲法条約の法的課題、採択状況の背後にある加盟国の動向などを中心に調査研究を行った。 まず、租税政策については、従来から調査を行ってきた欧州基本条約上の四つの基本権と国内租税立法の関係についての調査研究を進めた。また、本年度は川端が欧州委員会のEuropean Union Visitors Programに選ばれ、5月下旬から1週間に亘り、ベルギー・ブラッセル市所在のEuropean Union, Council of Europe, European Parliamentなどを訪問し、担当者から政策動向などについて直接ヒアリングすることができた。このProgramは欧州委員会が企画実施しているものであり本件科研費研究と直接の関係を有するものではないが、本件科研費研究がまさに欧州における資本移動の自由という基本権価値と国内租税立法の関係について言及するものであり、このProgramは本件研究を支えるものとなった。このProgramでのヒアリングを通じて、欧州委員会他の関係者も政策サイドから欧州司法裁判所の動向を注目していることが明らかとなり、政策形成と司法判断の緊張関係について、興味深いコメントが得られた。また、その後、昨年に続いてEATLP年次大会(ナポリ)に参加し、国際取引について、附加価値税制の文脈で「租税」の意義が再度問われようとしている欧州の状況について情報収集を行った。 次に、2004年10月末に署名された欧州憲法条約が加盟国の国民投票により順次採否が決せられるなか、昨年に引き続いて、同憲法条約の概要と評価を行った。資本の自由移動に関する規定自体には変更はないものの、ユーロ・グループに属する加盟国の権限が若干強化されるとともに、テロ対策を念頭に置いて、マネー・ロンダリング等に関連する警察・刑事司法協力が強化され、従来の全会一致に基づく政府間協力から特定多数決を原則とすることや欧州検察官事務所設置の可能性が規定されているが、その具体的方向は今後のEUの対応による。また、派生法においては欧州逮捕状が本格的に施行されているが、双方可罰性を一定範囲で廃止する新たな試みが財政犯を含めて開始されていることについても、加盟国の国内動向を中心に、昨年同様継続的に調査を行った。 なお、本年度は研究計画の最終年にあたり、平成18年に入ってからは全体の総括的調整を行った。
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