2004 Fiscal Year Annual Research Report
生産基盤としての運輸整備・効率化、情報化進展、エネルギー効率化の経済分析・政策
Project/Area Number |
14330008
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
土井 正幸 筑波大学, 大学院・システム情報工学研究科, 教授 (40217609)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
伊藤 秀和 関西学院大学, 商学部, 専任講師 (30368451)
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Keywords | 運輸整備・効率化 / 情報化進展 / エネルギー効率化 / 経済インパクト / CGEモデル分析 / 地域経済政策 |
Research Abstract |
本研究の目的としては、新世紀の生産支援部門における最重要課題である運輸整備・効率化、情報化進展、エネルギー効率化が日本経済にもたらすインパクトを分析し、運輸経済政策、情報化経済政策、エネルギー経済政策のそれぞれ及びそれら相互の関係に重要な示唆を与える。波及効果の大きい新製品やベンチャー企業が期待薄な今、従来の社会資本・公共投資の定義を越えたこれら生産支援部門が企業効率化や経済成長の鍵を握る。 分析対象あるいは政策評価指標となる経済的インパクトとして第一に重要なのはGDPや部門別の生産額・要素所得であり、この他に国内消費や輸出入の構造に関心があり、また環境保全も考慮に入れる。こうした指標を基準として、CGEモデルなど各種の計量経済学的手法を駆使し、低調な日本経済が運輸・情報・エネルギーのうち何を整備あるいは効率化・進展化させることによって、どういうメカニズムで最も再成長するかを検証する。逆にいうと、どれに投資ないしは効率化が進んでも、あまり経済効果が期待できないのかを議論する。また、運輸・情報・エネルギー三部門の協調経済政策の複合経済効果を評価し、政策整合性についても指摘する。 3年目かつ最終年度としてまず分析内容的には、1、2年目に運輸整備・効率化や情報化進展の個別政策評価を中心に進めて出版してきたのに対して、交通と情報化との関係(インテリジェント交通システム)や運輸エネルギーと環境との関係(CO_2削減を炭素税で実現するか運輸効率化か)などの複合政策の評価に発展させ論文発表やmimeo作成した。 また、3年目のもうひとつの課題は、マクロだけでなく地域経済の視点にたって評価することと、関連政策優先度・政策整合性や協調政策立案を議論することである。そこで、つくば市のI・O表及び北海道や沖縄の地域CGEモデルを構築し、運輸政策評価などを行った。輸送費負担の大きいこれら遠隔地域では、輸送費の効率化が短期的に産業構造の変化を伴わない場合には費用節約となるが、産業構造の変化を伴う中長期的評価では域内生産よりむしろ一層の製品移入に頼った"非もの作り経済"に陥っていくことが予想されるとの結果も得た。そこで運輸効率化の協調政策として、製造企業の効率化・再立地(海外進出も)や地域産業構造再編も必要なことを確認した。 最初の2年間は主として、一般均衡のCGEモデルやVARによるシミュレーション評価のアプローチをとってきた。本年はさらに、長期の成長均衡の過程で道路や空港などがどのような貢献をしてきたのかを、都道府県や地域をベースにした成長回帰分析も行った。最後に、本研究はあくまで生産基盤に着目するものであるが、買物・娯楽行動に運輸インフラがどのような影響が与えるかも分析に加えた。このように運輸効率化・情報化などが与える経済効果を総合的に評価し、ただ大きなインパクトがあるだけでなく、整合性ある協調政策の必要性を強く認識した。
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