2004 Fiscal Year Annual Research Report
中東欧諸国のEU加盟とユーロの地域的国際通貨への転化に関する総合的研究
Project/Area Number |
14330026
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Research Institution | CHUO UNIVERSITY |
Principal Investigator |
田中 素香 中央大学, 経済学部, 教授 (20094708)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
井上 伊知郎 九州産業大学, 経済学部, 教授 (80151603)
岩田 健治 九州大学, 大学院・経済学研究院, 教授 (50261483)
星野 郁 国学院大学, 経済学部, 教授 (30199476)
藤川 和隆 阪南大学, 経済学部, 助教授 (70261485)
斎藤 智美 富士大学, 経済学部, 講師 (00292194)
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Keywords | EU東方拡大 / ユーロ / 国際通貨 / ドル本位制 / ERMII / 生産ネットワーク / バスケット通貨 / FDI |
Research Abstract |
ユーロが2002年3月専一流通に移行した後、2004年5月に中東欧等10カ国のEU加盟が実現した。本研究は中東欧諸国のEU加盟を踏まえて、ユーロの国際通貨としての発展を実物側と貨幣金融側から総合的に捉え、地域的国際通貨としてのユーロの性格を明らかにしようとするものである。すでに田中素香・藤田誠一編著『ユーロと国際通貨システム』(蒼天社刊、2003年5月)を本研究の中間成果として刊行し、それをベースに研究を進めてきた。内容的には、(1)ドル、マルク、ユーロの国際通貨としての比較、(2)EU=中東欧再生産圏・生産ネットワークの形成、(3)中東欧諸通貨のユーロとドルに対する為替相場変動のトレンド、等であるが、平成16年度には、(4)EU通貨協力の東アジアへの適用、という新たな課題にも挑戦した。 平成16年度には数度のサブグループ研究会、2度の全体研究会、主要メンバー(3名)によるエストニア、リトアニア、ブリュッセルでの実体調査、および研究代表者による「EU拡大とドイツ経済の関連に関する現地研究」(ハンブルク世界経済研究所)などを実施した。平成16年4月に実施されたBIS(国際決済銀行)をとりまとめ機関とする世界の主要中央銀行による「外為活動調査」の結果が同年秋から発表されたので、それについても系統的に研究を行い、学会発表、論文発表を研究分担者が行った。しかしBISによる正式の報告書の発表は05年3月であったため、引き続き研究を進めている。 ユーロの国際通貨機能はドルに大きく劣っており、為替媒介通貨としては、マルクよりも劣位にある。また中東欧諸国通貨は時間の経過とともにユーロとの為替相場安定を強化しており、ユーロ圏に編入されていることを計量的手法によって明らかにした。若干の中東欧諸国通貨はERM IIに参加した。ユーロ自体はヨーロッパ地域の国際通貨であり、グローバルにはドルが不安定化したときの逃避通貨にはなりえても、ドルに対抗するような国際通貨となることは近い将来ありえないという展望を示している。また東アジアにおける為替相場安定のために、バスケット通貨方式による為替相場安定を目指す政策提案を行った。 以上を総括して現在報告書を作成している。著書としての刊行も予定している。
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