Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
桂 利行 東京大学, 大学院・数理科学研究科, 教授 (40108444)
宮岡 洋一 東京大学, 大学院・数理科学研究科, 教授 (50101077)
織田 孝幸 東京大学, 大学院・数理科学研究科, 教授 (10109415)
斎藤 毅 東京大学, 大学院・数理科学研究科, 教授 (70201506)
小木曽 啓示 東京大学, 大学院・数理科学研究科, 助教授 (40224133)
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Research Abstract |
前年度に引き続き,代数多様体の導来圏の研究を進めた.まず,「代数多様体のK同値から導来圏の同値が導かれるか」というかねてからの予想を研究した.極小モデル理論のよれば,K同値を与える双有理写像はフロップの積に分解すると思われるので,フロップから導来圏の同値が導かれるということを証明することを目標とした.ところが,京都大学の並河良典氏が,Grassmann多様体G(2,4)上の余接束に対して構成されたフロップに対しては,自然に考えられる核を使った積分変換では導来圏の同値を与えないということを証明し,予想の反例の存在の可能性を示した.そこで,研究代表者はこの場合をさらに詳細に研究し,自然に考えられる核とは異なる核を導入すれば,やはり導来圏の同値が得られることを証明した.こうして,この場合には予想が正しいことを証明した.証明は,ある種のベクトル束のコホモロジー群の消滅を示すことに帰着されるのだが,小平型の消滅定理からは導かれないので,複雑な計算が必要になった. 次に,比較的簡単な構造をもった代数多様体に対して,その導来圏を決定するという問題を考えた.導来圏は複雑な対象であるが,射影空間やGrassmann多様体に対しては,その上の特異ベクトル束の列から構成できることが知られていた.これを使えば,例えば射影空間上のベクトル束を調べることができた.この研究では,トーリック多様体の場合を考察した.そして,トーリック多様体の導来圏は,連接層の特異列で生成されるということを証明した.証明には,対数的極小モデル理論をトーリック多様体に対して適用し,因子収縮写像や対数的フリップに対しては前年度に得られた結果を使った.はじめに与えられたトーリック多様体がたとえ滑らかでかつ境界のないものあっても,途中の双有理変換や森ファイバー空間の考察から,特異点や境界を持った場合も考える事が必然的に必要になることに注意した.
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