2004 Fiscal Year Annual Research Report
チベットにおける高エネルギー宇宙ガンマ線・宇宙線の研究
Project/Area Number |
14340070
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
湯田 利典 東京大学, 宇宙線研究所, 名誉教授 (60092368)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
瀧田 正人 東京大学, 宇宙線研究所, 助教授 (20202161)
大西 宗博 東京大学, 宇宙線研究所, 助手 (10260514)
山本 嘉昭 甲南大学, 理工学部, 教授 (70068112)
堀田 直己 宇都宮大学, 教育学部, 教授 (60157039)
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Keywords | チベット / knee / 連動実験 / 空気シャワー観測装置 / コア検出器 / 一次宇宙線 / 宇宙線加速 / 超新星残骸 |
Research Abstract |
中国と共同でチベットのヤンパーチン(標高4300m)に空気シャワー観測装置を設置し、高エネルギー宇宙線の観測を行なっている。現在稼働している空気シャワー観測装置は、789台のシンチレーション検出器を7.5m間隔の碁盤目状に配置したもので、検出器がカバーする有効面積は約37000平方メートルである。3TeV以上の宇宙線シャワーを高精度で観測できる。この装置の中央付近に、近い将来、面積約1000平方メートルのコア検出器を設置し、空気シャワー装置と連動させることにより、knee領域の一次宇宙線の化学組成の研究を推進する予定である。 今年度は、このための新コア検出器のR&Dを行なった。コア検出器にはプラスティックシンチレータを用いるが、検出器の信号の場所による一様性が良いこと、信号のダイナミックレンジが大きいこと、一台当たりの単価が安いことが条件となる。このために、シンチレータにファイバーを埋め込み光信号を光電子増倍管で検出する方式を検討した。実際に4台のコア検出器を製作し、チベットに設置して空気シャワー装置と連動させ、現在順調に稼働している。この結果を検討してさらに改良を行い、最終的には、約400台の検出器を製作する予定である。この作業のために、研究者を現地に派遣した。 96年から99年にかけて行なった空気シャワー装置とエマルションチェンバーの連動実験で得られたガンマ線ファミリーデータの解析を行い、1000TeV以上のエネルギー領域での一次陽子、ヘリウム成分のエネルギースペクトルを世界で初めて観測した。観測された陽子成分のスペクトルの傾斜は100TeV以下の直接観測データに較べて急であり、陽子成分のスペクトルの折れ曲がりが観測された。これは、超新星残骸での宇宙線加速の直接的証拠となるものである。結果は、現在学術雑誌に投稿中である。 また、この連動実験の使用されたコア検出器(面積80平方メートル)を再調整して、現在その稼働を行なっている。この実験により1000TeV領域までの一次陽子成分の観測が可能である。この初期データの解析を行ない、モンテカルロ計算結果との比較を行なった。この結果は、将来計画立案の貴重なデータとなる。 1000平方メートル規模のコア検出器によって、knee領域での一次宇宙線組成がどこまで明らかに出来るかを定量的に調べるために、膨大なモンテカルロ計算を行なっている。この装置により、鉄成分の高精度の観測が可能であることが分かった。この観測は超新星残骸でのknee領域までの宇宙線加速の正否を決める重要な結果となる。この計算の遂行と議論のために、中国人研究者を2ヶ月間招聘した。
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