2004 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
14340169
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
杉浦 直治 東京大学, 大学院・理学系研究科, 教授 (80196716)
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Keywords | 隕石 / 太陽系 / 年代測定 / カソードルミネッセンス / 二次イオン質量分析 |
Research Abstract |
半減期の短い消滅核種を使って太陽系の初期の歴史を明らかにするのが本研究の目的でした。年代測定は二次イオン質量分析計を使って行うのですが、これを効率的に行うためにカソードルミネッセンスを使うのが本研究の特徴でした。実際にカソードルミネッセンスを使って効率的に年代測定ができる一例としてアノーサイトのAl-Mg年代測定があります。アノーサイトは白色包有物やコンドルールに入ってますが、コンドルール中では普通Al-Mg比が小さく有意な同位体比異常を検出することが難しいものがほとんどです。しかし中にはAl/Mg比の大きなものもありそれらはカソードルミネッセンスで明るく見えることが解りました。従って、カソードルミネッセンスでアノーサイトを見ることによりAl/Mg比の大きなアノーサイトを選んで、効率的に年代測定ができることがわかりました。また別の例としてコンドライト中のコランダムの測定をあげることができます。コランダムもAl-Mg系の年代測定を行なえるのですがコンドライト中の存在度が小さいため特にマトリックス中のコランダムについてはほとんど測定例がありませんでした。今回カソードルミネッセンスによりコランダムを検出することにより、存在する(変成されていない)コランダムをもれなく見つけることができることがわかり、効率的にコランダムの年代測定ができることが示されました。消滅核種を使った年代測定でしばしば問題になるのが消滅核種が本当に年代測定に使えるのかという問題です。これは年代測定に使えるためには原始太陽系が一様に混ざっている必要があるのですが、その保障がないことに起因しています。実際にはいくつかの年代測定系を比較して、矛盾がないかどうかを確かめて、年代測定に使えるかどうかを判断するわけです。従って、新たな年代測定系を確立するためには、いろいろな試料を測定する必要があります。最近見つかった60Feが年代測定に使えるかどうかを確かめるため、アングライトの60Fe-60Ni系の測定を行い、60Feは原始太陽系に一様に分布していなかったという予備的な結果を得ています。また年代測定とは直接関係はありませんが、コンドライト中に存在する、アメーバーオリビンアグリゲイト(略してAOAと呼ぶ、難揮発性で白色包有物と関係の深いもの)がカソードルミネッセンスで明るく見えることを使って、AOAの形成、変成の過程を明らかにする研究を行いました。これはAOAが水質変成を受けるとカソードルミネッセンスの光り方が変化することを使ったものです。化学組成の測定結果とあわせて考察することにより、AOAの形成は難揮発性元素について非平衡な凝縮によることを明らかにしました。また、変成度が低いと言われているコンドライトでも変成度の高いものが混ざっていることを明らかにしました。
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Research Products
(3 results)