2003 Fiscal Year Annual Research Report
次元構造をもつ新しいスピンクロスオーバー錯体の研究
Project/Area Number |
14340209
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Research Institution | Kumamoto University |
Principal Investigator |
松本 尚英 熊本大学, 理学部, 教授 (80145284)
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Keywords | スピンクロスオーバー / 光誘起 / 水素結合 / 超分子 / プロトン / 混合原子価 / キラル集積 |
Research Abstract |
低スピンと高スピン間を相互変換するスピンクロスオーバー現象は、分子双安定性の象徴的現象であり、次世代光機能素子として大きな期待を集めている。しかし、この現象は、(1)3d^4-3d^7電子構造をもつ金属錯体にのみ観測される。(2)狭い領域の配位子場強度を与える配位子に限定される。(3)長寿命光誘起準安定状態には、大きなスピンサイト間相互作用が必要である。この制約のために、ピリジン、トリアゾール,テトラゾール系配位子のごく少数金属錯体にのみ光誘起スピンクロスオーバー現象が観測され、大方の研究はこれらを分子修飾することにより実施されている。 私は混合原子価、2次元キラル層構造をもつ全く新しいスピンクロスオーバー錯体を見出した。3脚型配位子H_3Lを含み、組成式[Fe^<II>H_3L][Fe^<III>L]X_2をもつ。結晶構造は、2価プロトン種[Fe^<II>H_3L]と3価脱プロトン種[Fe^<III>L]が水素結合により連結してキラル2次元層状構造を形成している。成分2価、3価錯体もスピンクロスオーバー挙動を示し、水素結合による2次元層構造を形成すると顕著なスピンサイト間相互作用が発現し、熱履歴、凍結効果が観測された。陰イオンは、スピン転移に顕著な影響を及ぼし、2段階スピン転移へと導く。本分子系は、以上のように、美しい構造と優れた特徴をもつ新しいスピンクロスオーバー錯体系であり、光誘起、キラリティのおよぼす効果を研究した。また、脱プロトン化に伴うスピン変化、酸化数変化を可逆的に起こす分子系であることを明らかにした。
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Research Products
(4 results)
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[Publications] Yamada M., 他8名: "Interlayer interaction of two-dimensional layered spin crossover complexes"Inorganic Chemistry. 42. 8406-8416 (2003)
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[Publications] Ikuta Y., 他10名: "A new family of spin crossover complexes with a tripod ligand"Inorganic Chemistry. 42. 7001-7017 (2003)
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[Publications] Ohta, Y., 他5名: "Spin crossover in a supramolecular Fe(II)-Fe(III) system"Material Science-Poland. 21(2). 191-198 (2003)
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[Publications] Sunatsuki Y., 他10名: "An unprecedented homochiral mixed-valence spin-crossover compound"Angewandte Chemie International Edition. 42. 1614-1618 (2003)