2002 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
14340240
|
Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
齊藤 隆 北海道大学, 北方生物圏フィールド科学センター, 助教授 (00183814)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
前川 光司 北海道大学, 北方生物圏フィールド科学センター, 教授 (80002301)
植村 滋 北海道大学, 北方生物圏フィールド科学センター, 助教授 (80250497)
|
Keywords | 齧歯類 / エゾヤチネズミ / 個体群 / 周期変動 / サイクル / 密度依存性 / 季節性 / 同調性 |
Research Abstract |
北方の森林に生息する動物の特徴である個体数の周期的な変動のメカニズムを解明するために,北海道全体に分布するエゾヤチネズミ225個体群の変動様式を密度依存性に著目して分析した.その結果,個体数の変動は1年遅れと2年遅れの2つの密度依存性によってよく記述され,周期的な変動の形成には2年遅れの密度依存性が重要であることが明らかになった.また,年次的な密度依存性を季節成分に分析することに成功し,1年遅れの密度依存性おいては,冬の密度依存性の方が夏よりも高く,密度依存性の強さに季節間で相関がないこと,2年遅れの密度依存性は夏と冬にほぼ同等に働き,季節間に相関があること,が明らかになった.この結果,1年遅れの密度依存性には繁殖に関わる要因と死亡に関わる要因の少なくとも2つの要因が作用している,2年遅れの密度依存性には死亡に関わる要因が重要である,と考察された.一方,密度依存性には地理的な変異がみられ,北海道においては1年遅れ,2年遅れの密度依存性はともに北東に向かうほど強くなり,周期変動性の地理的な変異(北東に向かうほど周期性が強まる)とよく一致していた.北海道は西の暖流,東の寒流の影響を受けるため,北東に向かうほど寒冷となる.つまり,北東地域ほど密度依存性が強くなる冬が長いため,年次的な密度依存性が強まると考えられ,密依存性の季節成分の分析と地理的変異の分析結果がよく一致した. 個体群間の同調性を分析すると,数年に一度,広い面積にわたって起きる低密度年によって,長期間の同調性が維持されるカップリングと呼ばれる現象の存在が明らかになった.カップリングの頻度が高いほど同調性も高まるが,エゾヤチネズミの周期変動性個体群で観察されている程度の同調性を維持するためには4,5年に1度のカップリングで十分であることがわかった.
|
Research Products
(7 results)
-
[Publications] N.C.Stenseth, T.Saitoh: "Interaction between seasonal density-dependence structures and length of the seasons explain the geographical structure of the dynamics of voles in Hokkaido : an example of seasonal forcing"Proceedings of Royal Society London (Biology). 269. 1853-1863 (2002)
-
[Publications] D.Haydon, T.Saitoh: "Spatio-temporal dynamics of the grey-sided vole in Hokkaido : identifying coupling using state-based Markov-chain modeling"Proceedings of Royal Society London (Biology). 270. 435-445 (2003)
-
[Publications] H.Matsuda, T.Saitoh: "Harvest-based estimation of population size for sika deer in Hokkaido Island, Japan"Wildlife Society Bulletin. (in press).
-
[Publications] Shimada, T., T.Saitoh: "Deleterious effects of acorns on the wood mouse Apodemus speciosus"Population Ecology. (in press).
-
[Publications] M.Sakuragi, K.Maekawa: "Comparison of diurnal and 24-hour sampling of habitat use of female sika deer"Mammal Study. 27. 101-105 (2002)
-
[Publications] M.Sakuragi, K.Maekawa: "The benefits of migration in a sika deer population in eastern Hokkaido, Japan"Ecological Research. (in press).
-
[Publications] 齊藤 隆: "森のねずみの生態学(個体数変動の謎を探る)"京都大学学術出版会. 255 (2002)