2003 Fiscal Year Annual Research Report
宿主に対応したカッコウの系統は雌側の遺伝子により進化するか
Project/Area Number |
14340243
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Research Institution | Shinshu University |
Principal Investigator |
中村 浩志 信州大学, 教育学部, 教授 (60135118)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
高須 夫悟 奈良女子大学, 理学部・情報科学科, 助教授 (70263423)
田口 悟朗 信州大学, 遺伝子実験施設, 助手 (70252070)
林田 信明 信州大学, 遺伝子実験施設, 助教授 (80212158)
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Keywords | カッコウ / 托卵 / 相互進化 / mtDNA / 卵擬態 / 分子生物学 / 国際情報交換 / イギリス |
Research Abstract |
カッコウはさまざまな宿主に托卵しているが、宿主の卵に似た卵(卵擬態)を産む傾向が古くから知られている。長野市郊外千曲川での20年間にわたるカッコウの研究から、カッコウ卵の模様等の形質は、雌側の遺伝子のみによって伝えられることで、それぞれの宿主卵に似た卵を産むカッコウの系統(gentes)が進化した可能性が高いことが明らかにされた。今回のプロジェクト研究は、この点について、個体識別された母と娘について卵の模様の比較、遺伝子解析、托卵行動の観察によりさらに実証することで、カッコウと宿主の攻防戦を通し、カッコウ卵の模様の進化が起こる仕組みを解明することが狙いである。2年目にあたる今年度は、以下の調査を実施し、調査内容と方法の検討を行った。 (1)ミトコンドリアDNA解析 千曲川と野辺山高原を調査地に、さまざまな宿主の巣探しを行い、托卵されたカッコウ卵の発見に務め、そのうち無事に育った計35個体のカッコウの雛から血液を採集でき、昨年とあわせ計63個体からサンプルを採集できた。これらの血液のミトコンドリアDNAのコントロール領域を解析したところ、新たな1ハプロタイプを加え、計6つのハプロタイプを見出すことができた。しかし、地域と宿主による変異が大きく、Nature(2000)誌に発表した計39資料と合わせると、イギリスのカッコウで見出されたような宿主に対応したハプロタイプの傾向は、日本のカッコウでは見出せず、日本では宿主に対応した系統はきわめてあいまいであるという結論になった。 (2)カッコウの雛への足輪による標識 今年度は両調査地を合わせて計32羽のカッコウの雛に足輪をつけ、放鳥することができ、昨年と合わせると計57羽の雛に足輪をつけたことになる。そのため、次年度は生きて戻ってきた標識個体を捕獲し、発信機を装着して放鳥し、行動を追跡することにより自分を育てたと同じ宿主に托卵するかどうかを確認する調査を本格的に実施する予定である。 (3)国外の研究者との情報交換と調査結果の検討、今後の調査内容の検討 研究分担者の一人であるケンブリッジ大学のN.B.Davies教授を昨年11月に訪れ、情報交換と調査結果の検討、今後の調査内容の検討を行った。また、ハンガリーのカッコウ研究者を訪れ、情報交換と今後の共同研究について検討した。 その結果、次年度はハンガリーとスペインの研究者も加えて日本で共同研究を実施することになった。 今回の研究課題での論文発表はまだないが、昨年9月に開かれた日本鳥学会でDNA解析結果の口頭発表を行った。また、今年9月に開催される同学会では、外国の研究者を複数招聘し、今回の研究課題に関係したシンポジウムを開催する予定である。
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