2003 Fiscal Year Annual Research Report
深海化学合成共生系における宿主動物と共生菌の系統と多様性に関する研究
Project/Area Number |
14340268
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Research Institution | Hiroshima University |
Principal Investigator |
長沼 毅 広島大学, 大学院・生物圏科学研究科, 助教授 (70263738)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
藤倉 克則 海洋科学技術センター, 海洋生態環境研究部, 副主幹 (10344293)
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Keywords | 冷湧水 / 海底変色域 / 富山湾 / 後志海山 / 硫酸還元酵素 / 相模海丘 / ハオリ / イオウ酸化細菌 |
Research Abstract |
「しんかい2000/なつしま」NT01-07航海(2001年)において富山湾および後志海山における黄変色域の調査で採取した資料・試料について、黄変色域堆積物の微生物遺伝子解析およびリン脂質脂肪酸解析を行った。その結果、富山湾および後志海山の黄変色域は海底下からの湧水による可能性が示唆された。特に、富山湾において深海性ホヤ(オオグチボヤ)のコロニーを世界で初めて発見したが、そのコロニー部の堆積物からも湧水を示唆する結果が得られたが、まだ確定的ではない。 「ドルフイン3K」第221潜航(1995年)で採取した相模海丘冷湧水帯の表層堆積物について、異化型硫酸還元酵素遺伝子(dsr)の多様性を解析した。その結果、バクテリア(真正細菌)由来と考えられるdsrを5グループ、アーキア(古細菌、始原菌)由来と考えられるdsrを9グループ得ることができた。バクテリアdsrはいずれも東太平洋海膨の熱水性ゴカイ(ハイカブリゴカイ)の体表共生微生物(episymbionts)のdsrに近縁であり、西太平洋の冷湧水帯のdsr(本研究)との系統・生物地理的な関係の解明が待たれる。一方、アーキアdsrはいずれも今までに知られていない系統であり、相模海丘の冷湧水帯に新規硫酸還元アーキアの存在することが示唆される。冷湧水帯での硫酸還元はしばしば嫌気的メタン酸化と共役するので、海底下メタンハイドレートの生物地球化学的な動態に関連した知見を提供できると考えられる。 化学合成共生系のモデル生物として相模湾・初島沖の冷湧水帯から採取したチューブワーム(ハオリムシ)の細胞内共生菌について、その系統に関する遺伝子解析を行った。その結果、チューブワーム共生菌には少なくとも4グループが混在することが分かり、その一つ(アルファ・プロテオバクテリアに属する菌)は好気的イオウ酸化化学合成細菌に近縁であることが示唆された。他の3グループはいずれも従属栄養細菌しか知られていないグループに属する未培養菌に近縁なので、その宿主(ハオリムシ)への寄与は不明のままである。希望的な見方として新規の化学合成独立栄養細菌であることを想定したいが、それを裏付ける証拠はまだない。
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Research Products
(5 results)
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[Publications] Ogawa, Mari: "Ester-linked phospholipid fatty acids in marine sediments : testing the possibility of methane seepage in Japan Sea"Aquatic Ecosystem Health & Management. 6(4). 397-408 (2003)
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[Publications] Fukuba, TatsuhLo: "Phylogenetic diversity of dissimilatory sulfite reductase genes from deep-sea cold seep sediment"Marine Biotechnology. 5(5). 458-468 (2003)
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[Publications] Kimura, Hiroyuki: "Endosymbiotic microflora of the vestimentiferan tubeworm, Lamellibrachia sp., from a bathyal cold seep"Marine Biotechnology. 5(6). 593-603 (2003)
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[Publications] 藤倉 克則: "化学合成がうみだすもうひとつの深海生態系"日本ベントス学会誌. 58. 16-19 (2003)
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[Publications] 長沼 毅: "生命の星・エウロパ"日本放送出版協会〔NHK出版〕. 244 (2004)