2003 Fiscal Year Annual Research Report
トンネルギャプ差周波発生赤外光を用いた単一分子STMナノスペクトロスコピー
Project/Area Number |
14350017
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
前田 康二 東京大学, 大学院・工学系研究科, 教授 (10107443)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
福谷 克之 東京大学, 生産技術研究所, 助教授 (10228900)
目良 裕 東京大学, 大学院・工学系研究科, 助手 (40219960)
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Keywords | 走査トンネル顕微鏡 / 赤外吸収 / 分子振動 / 非線形光学 / ナノ分解能 / 近接場 / プラズモン / 分析 |
Research Abstract |
走査トンネル顕微鏡(STM)の探針-試料間の電圧-電流特性に存在する強い非線形性と、金属探針近傍の光電界強度増強効果を利用して、STMトンネルギャップ付近に異なる波長のレーザ光を照射することにより、非常に高い強度の差周波赤外光を探針直下に発生させ、試料上に存在する単一分子の振動を励起し、これをSTM探針で検出することにより、その分子の同定と結合状態を直接解析できる新しい原理にもとづいたナノ分解能顕微分光手法を開発することを目的として、今年度は次の成果を得た。 I.金属探針による光電場増強効果の実証 STM金属探針の近傍で光電場増強が起こることを実証する目的で、グラファイト試料とWおよびPt-Ir探針の組み合わせについて実験を行った。近赤外域の光を探針-試料間に照射すると、電圧-電流特性の非線形性に起因してSTMトンネル電流にはサンプルバイアス電圧に依存した光整流電流が流れることを確認した。観測された光整流電流をもたらす実効的な光電場強度の照射した光の電場強度の比から、光電場増強度は、STM実験で常用されるW針で10^3倍、Pt-Ir針で5×10^2倍と、通常Au,Agなどプラズモン共鳴により大きな効果が起こるとされるケースと同程度の増強効果が得られることが判明した。 II.差周波赤外光発生の確認 差周波として、所望の赤外光が探針直下で発生することを確かめるため、波長半固定のチタンサファイヤレーザと波長可変半導体レーザの2光を、グラファイト基板上堆積したC_<60>薄膜試料とW探針間に同時照射して実験を行った。同時照射に同期してSTMトンネル電流に現れる変調信号を半導体レーザの波長の関数として測定した結果、C_<60>結晶の分子振動にもとづく赤外吸収スペクトルと良く一致するスペクトルが観測され、探針直下で差周波赤外光が発生していることを確認し、STMを用いた赤外吸収スペクトル測定に世界で初めて成功した。
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Research Products
(11 results)
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[Publications] 小林昌弘, 目良裕, 中村芳明, 前田康二: "STM金属探針直下における光伝場増強効果の実測"物理学会秋季大会講演予講集. 58・2(4). 802-802 (2003)
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[Publications] 飛田聡, 前田康二: "STMを用いた機能材料のナノ分光解析"信学技報. 102・698. 21-24 (2003)
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[Publications] 飛田聡, 目良裕, 前田康二: "STMで調べたEL2センターの双安定挙動"応用物理. 72・6. 736-740 (2003)
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[Publications] Y.Mera, K.Suzuki, K.Maeda: "Electron-stimulated Self-diffusion in GaN Crystals"Physica B. 340-342. 488-491 (2003)
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[Publications] A.Hida, Y.Mera, K.Maeda: "The Origin of EL2-family Evidenced by STM Direct Observations of Individual Photoquenching Behaviours"Physica B. 340-342. 299-303 (2003)
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[Publications] Y.Nakamura, Y.Mera, K.Maeda: "Hopping Motion of Chlorine Atoms on Si (100)-(2x1) Surfaces Induced by Carrier Injection from Scaning Tunneling Microscope Tips"Surf.Sci.. 531. 68-76 (2003)
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[Publications] A.Hida, A.Iwase, T.Kambara, K.Maeda: "STM Study of Ion Tracks Created in GaAs by GeV Xe Ion Irradiation"Nuclear Intstrum. Methods B. 209. 140-144 (2003)
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[Publications] A.Hida, T.Meguro, K.Maeda, Y.Aoyagi: "Analysis of Surface Modifications on Graphite Induced by Slow Highly Charged Ion Impact"Nuclear Intstrum.Methods B. 205. 736-740 (2003)
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[Publications] T.Meguro et al.: "Nanoscale Transformation of sp^2 to sp^3 of Graphite by Slow Highly Charged Ion Irradiation"Nuclear Intstrum. Methods B. 209. 170-174 (2003)
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[Publications] Y.Koguchi et al.: "Modification of Highly Oriented Pyrolytic Graphite Surfaces with Highly Charged Ion Irradiation"Nuclear Intstrum. Methods B. 205. 202-205 (2003)
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[Publications] 前田康二, 篠塚雄三: "電子励起を用いた原子分子操作"日本物理学会誌. 58・6. 414-421 (2003)