2004 Fiscal Year Annual Research Report
流出機構を規定する土壌特性の現地計測とそれに基づくモデリング
Project/Area Number |
14350267
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
椎葉 充晴 京都大学, 地球環境学堂, 教授 (90026352)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
宝 馨 京都大学, 防災研究所, 教授 (80144327)
立川 康人 京都大学, 防災研究所, 助教授 (40227088)
市川 温 京都大学, 地球環境学堂, 助手 (30293963)
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Keywords | 土壌構造 / 土粒子 / 空隙径 / 粒度分布 / 個別要素法 |
Research Abstract |
前年度は、畑地を主体とした裸地・圃場域における雨水浸透流出現象のモデル化に関する研究を行なったが、今年度は、前年度に開発されたモデルのパラメタを、現地で計測可能な土壌物理量から決定するための基礎的な研究を実施した。具体的な成果を以下にまとめる。 土壌中の水は、土壌内部の空隙をつたって移動する。したがって、その流動形態は、土壌の空隙がどのような形で存在しているか(土壌の空隙径がどのように分布しているか)に強く依存する。土壌の空隙は,土壌の骨格部分を構成する土粒子間の隙間であることから、その径は、土粒子の粒径分布や土粒子同士の接合の仕方と密接な関係がある。実際,土壌の空隙径分布から土壌水分特性(圧力水頭-土壌水分量関係)や土壌透水特性(透水係数-土壌水分量関係)を定式化することに成功した研究も存在する。しかし、これらの研究では,空隙径の分布を実測するのではなく,最終的に導出された土壌水分特性や土壌透水特性が観測値によく適合するように空隙径分布のパラメタを同定するなど、結局は土壌の空隙径が土壌水の流動形態に影響を与えるメカニズムをモデル化しきれていない。また、土粒子の粒径分布と土壌密度から土壌の空隙径分布を推定する手法を提案している研究もあるが、この研究では,異なる粒径の土粒子が隣接して配置される状況が考慮されていない。本研究では,これらの先行研究の問題点を解決するために,異なる粒径の土粒子がランダムに配置された状態において生じる空隙径の分布を、土壌構造の分析に基づいて推定する手法を開発した。具体的には,粒子体の挙動をシミュレートする手法である個別要素法を用いて土粒子の充填状態を計算機上に再現したうえで、その充填状態における土壌の空隙径を計測して空隙径分布を推定した。この手法の利点は,現実には計測が困難である土壌の空隙径を計測することが可能となり,また比較的に容易に計測が可能な土壌物理量(粒度分布および土壌密度)から空隙径分布を推定することが可能となる点である。実際にこの手法を用いて豊浦標準砂の空隙径分布を推定したところ、平均が約70μm,標準偏差が約50μm程度の対数正規分布に従うことが明らかとなった。
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