2002 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
14350335
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (B)
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Research Institution | Independent Administrative Institution National Institutes for Cultural Heritage Tokyo National Research Institute for Cultural Properties |
Principal Investigator |
朽津 信明 独立行政法人文化財研究所東京文化財研究所, 国際文化財保存修復協力センター, 主任研究官 (50234456)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
下山 進 吉備国際大学, 教授 (80341147)
斎藤 英俊 独立行政法人文化財研究所東京文化財研究所, 国際文化財保存修復協力センター, センター長 (30271589)
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Keywords | 塗装 / 顔料 / 彩色 / スマルト / 分光光度計 / 反射スペクトル / 非破壊分析 / 二次元分布 |
Research Abstract |
建造物の彩色を二次元的に捉えるために、二次元分光計を開発し、建造物内でどの彩色がどこに分布しているかを平面的に調査する方法を確立した。これは、従来から分光光度計によって行っていた可視光反射スペクトル測定を、メッシュを切りながら連続的に行っていくことにより、平面上の任意の場所の反射スペクトルを一度に計測できるシステムである。 開発された装置を用い、試みに日光文化財とほぼ同時代の彩色を豊富に留める、鎌倉市英勝寺の祠堂内部の須弥壇に残る彩色を調査した。その結果、それぞれの箇所の測色結果は一枚の画像に統合され、あたかも対象物のデジタル写真を見るような画面上に、厳密に測定された色を再現することができた。過去の研究によって報告されている通り、反射スペクトルの情報は単なる色情報のみならず顔料の成分とほぼ一対一対応していることから、このことにより建造物上で、どの部分にどの顔料が用いられているかという使用顔料の分布を一枚の画像にて表現することが可能となった。特に英勝寺においては、青の部分の表現に、通常の群青ではなく、コバルトを含んだ特徴的な顔料(便宜的にスマルトと呼ぶ)が用いられていることが確認され、その使用分布が判明した。 スマルトは、日光東照宮でも認められており、それぞれが当初彩色だと仮定すれば、時代的にごく近接した日光文化財と同様の技法で、この英勝寺の青色も塗装されていると考えられ、従来から指摘されていたこの建物の特徴がさらにはっきりと明らかになってきたことになる。また、そうしたスマルトがどのような時代的、そして地位的分布をもって塗装に用いられているかを明らかにするために、近接した時代に建てられた高野山・徳川家霊台や、専修寺御影堂などでも調査を行った。こうした視点から、近世建造物の塗装の特徴を明らかにしつつある。
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Research Products
(2 results)